オメガのクロノグラフと言えば、1957年に誕生した「スピードマスター」が真っ先に浮かぶと思うが、実はそれ以前から、精力的にクロノグラフを作り続けてきた歴史がある。
先日発売された新作「スピードマスター クロノスコープ」は、1940年代に製造されたオメガの伝説的なクロノグラフのオマージュから生まれたものだ。
その詳細を追ってみたいと思う。
クロノグラフ黄金時代の浪漫が蘇る
腕時計式のクロノグラフは20世紀初頭から実用化が始まり、第一次世界大戦頃から一気に需要が高まった。
それから1940年代にかけて急速な技術の発展から多種多様な計測スタイルが生まれていった一方、時代の流れとともに今では失われてしまったデザインも非常に多い。
スピードマスター クロノスコープに採用された“スネイルデザイン”もそのひとつだ。
このモデルの場合は、距離から速度を計測するタキメーター、音速から距離を計測するテレメーター、心拍数を計測するパルスメーターという3つのスケールがプリントされている。
クロノグラフの歴史に対するオマージュと現代のテクノロジーとの融合にこそ、このモデルの真価がある。その最重要ポイントが、サファイアクリスタル製のケースバックから覗く「コーアクシャル マスター クロノメーター キャリバー 9908」。
天輪から放線状に広がるアラベスク模様のジュネーブ装飾仕上げが美しい手巻き式ムーブメントは、耐摩耗性のあるダイヤモンドライク カーボンコーティングを施したツインバレルを導入することで、約60時間のパワーリザーブを保持する。
マスター クロノメーター認定を受けたこのムーブメントは、スイス連邦計量・認定局(METAS)が定めた業界で最も厳しいテストをクリアしており、過酷な環境下でも複数の機能を正確に作動させる。
機械式時計でも最も奥深いジャンルのひとつと言われるクロノグラフは知れば知るほど面白い。
最新鋭のムーブメントとともにケースサイズを43mmにサイズアップさせて蘇った幻の傑作は、現代的な実用性を備えると同時に、クロノグラフの黄金時代への限りない浪漫が詰まっている。
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