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2021.12.06

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「会社の目標設定が高すぎるのに、部下をどう叱咤激励すれば?」への解決策

「モヤモヤ り〜だぁ〜ず」とは……
会社ではチームを任され、やりがいのある仕事もできている。反面、今までになかった悩みが増えてきた。明快な答えはなくモヤモヤする頭の中を、組織と人事の専門家がアドバイス。


本日の相談者:42歳、広告代理店勤務
「広告営業のリーダーをしています。この時世でメンバーはよく頑張っていると思うけれど、会社の目標設定が高すぎて目標値にはぜんぜん届かない。部下の尻を叩かなければならないのが辛いです。どこまで部下に寄り添いどこから叱咤激励すべきなのでしょうか」。

アドバイスしてくれるのは……

そわっち(曽和利光さん)

1971年生まれ。人材研究所代表取締役社長。リクルート、ライフネット生命保険、オープンハウスにて人事・採用部門の責任者を務めてきた、その道のプロフェッショナル。著書に『人事と採用のセオリー』(ソシム)、『日本のGPAトップ大学生たちはなぜ就活で楽勝できるのか?』(共著・星海社新書)ほか。

 

とうとう会社側の人間になってしまった

管理職となって使用者(経営者)側の利益を代表するような立場になると、労働組合法上では非組合員、つまり「使用者側の人間」とみなされることになります。
今まで一緒になって会社の愚痴を言っていたような後輩たちとも一線が引かれることになり、むしろ会社側の人間なので彼らから愚痴を言われる対象になるわけです。
会社の売上目標などに対しても、「こういう目標になった」と告げるのは自分だったりして、文句を言うどころか「なぜこんな高い目標になったのか」についての説明責任を問われる側です。
それが管理職、上司となるということです。

実体は伝言役だとしても意思決定の当事者としてふるまうべし


ところが、実際のところは、特に裁量権や発言権があるわけでもなく、経営層が決めたことを伝言役として伝えているだけということも多々あることでしょう。
決まった目標についても管理職本人が必ずしも納得しているわけでもない。それなのに、部下に対しては意思決定の当事者として振る舞わなくてはならないのはとても辛いことです。
だからといってここで「俺も納得言っていないけど、会社の方針だから」と逃げてしまっては最悪の状態になります。
部下からは「それなら徹底的に経営と戦ってほしい」と思われるでしょうし、経営層からは「管理職なのに会社批判をしている反乱分子」とみなされてしまいます。

まずは会社に忠誠をつくし、会社から信任を得よ

そんなとき、どう行動することが正解なのでしょうか。基本的には、管理職を拝命した以上、会社の代表者として振る舞わなくてはならないと私は思います。
納得いっていない方針が打ち出されたとしても、それを部下に伝える際に表情や言葉に出してはいけません。部下に文句を言われるかもしれませんが、可能な限り合理的な背景を考えて、説明し理解してもらう努力をするべきです。
そうして、会社の側から「あいつは、会社が決めた方針に対しては徹底的に実行しようとするやつだ」という信任を得ることが重要です。

社畜になるのではなく、影響力をつけるために


これは何も会社の奴隷や社畜として生きようと言っているわけではありません。むしろ、重要なときに会社に対して物申すことができる力をつけるために、そうしてはどうか思うのです。
会社の方針と言っても、重要なものから些末なものまでいろいろあります。オーナーの理不尽で非合理な命令もあるかと思います。
しかし、それを否定するよりも、そのオーナーの意図を汲んだうえで、まずは会社の方針を徹底的に実行していく。
そうなれば、あなたは経営層にとって「なくてはならない人」となっていきます。

徹底的にやってダメなら、変える力を持つことができる

それでも最終的には、会社の立てた目標や方針が高すぎたり、間違っていたりすることもあるでしょう。その場合でも、「徹底的にまずはやってみたこと」が生きるはずです。
社内で方針を変えるための提案をする際にも、「あれだけ頑張って試行錯誤したのに実現できなかったのだから」と自信を持って改善を訴えられるはずですし、その努力の姿を見ていた経営陣からも、「あれだけやった君がそういうのであれば、今回の方針は間違っていたかもしれない」と方針を変えてくれるかもしれません。
しかし、それもこれも、一度は納得いかずとも、徹底的に会社の方針に従ってやってみたからなのです。

「正しいことをしたければ、偉くなれ」


もう昔の話ですが、映画「踊る大捜査線」でいかりや長介さんが演ずる刑事が、織田裕二さんが演ずる後輩の刑事に対して「正しいことをしたければ、偉くなれ」と言ったセリフが話題になりました。
自分のやりたいことを言うだけではなく本当に実現したければ、それなりのパワーを持つ必要があると私は解釈しました。
一般の企業でも同じではないでしょうか。納得のいかないことを部下に命ずるのは確かにきついことです。しかし、それは自分にまだ力がないからかもしれません。
会社が非合理だと嘆くだけでなく、それをひっくり返すための力をつける方向の努力をしなければ、状況はずっと変わらないのではないでしょうか。
 
曽和利光=文
グラフィックファシリテーター®やまざきゆにこ=イラスト・監修
曽和利光さんとリクルート時代の同期。組織のモヤモヤを描き続けて、ありたい未来を絵筆で支援した数は400超。www.graphic-facilitation.jp
 
「モヤモヤ り〜だぁ〜ず」とは……
組織と人事の専門家である“そわっち”が、アラフォー世代の仕事の悩みについて、同世代だからこその“寄り添った指南”をしていく連載シリーズ。好評だった「20代から好かれる上司・嫌われる上司」の続編である。
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