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自分の手の届く範囲で幸せな暮らしを考える

ブランドとしてビジュアルでのサステイナブル訴求にも力を注いでいる。服と自然が融合するようなイメージの写真だ。 ©️Nanushka
今回はその素材とローカル生産に注目したが、長く服を着てもらうためのリペアサービスの提供や、荒廃した地域への植樹によるカーボンオフセットなど、ナヌーシュカの取り組みは多岐にわたっている。
そんなブランドの行動原理に強固な理論と実行力を与えたのが、’19年に発足した「サステナビリティチーム」であることを明示しておきたい。
[左]’20年には企業として5000本以上の植林に参加。これにより、’19年からの出張で発生した温室効果ガスの排出分を相殺した。©️Nanushka [右]ブダペスト、ロンドン、NYの直営店では服のリペアサービスを実施。またオーダーメイドもスタートするなど、より長く服を着られるようなサービスの提供に努めている。©️Nanushka
このチームが素材調達、オフィスサプライ、店舗デザイン、ケータリングや包装など、あらゆる分野に関するガイドラインを作成した。そして今も改訂を重ね、より良く、より洗練された行動を選択するためのルールを策定しているのだ。
毎月1回、マネジメントのトップが集まり「サステナビリティ委員会」を開催。ここでプロジェクトの立案と問題点が協議されるという。また毎週金曜日には、社内チャットでサステイナブルなトピックをシェア。社員の関心を高め、毎日の生活の中でより良い選択を促すのが目的である。
そう、サステイナブルはやりっぱなしではダメなのだ。不断の努力を続けることで実を結ぶのである。
サンドラさんのおすすめがこのユニセックスのレザーシャツ。化学物質、エネルギー、水の使用を抑えたプロセスで生産されたレザーを使用する。シャツ14万360円/ナヌーシュカ(ヒラオインク 03-5771-8809) ©️Nanushka
デザイナーとして、また企業理念を担うリーダーとしてブランドを牽引してきたサンドラさん。最後に、日本人にとっては決して馴染みがあるとはいえないブダペストという街についてたずねた。
「ブダぺストで育った私にとって、この街は自分の家のようなもの。家族や友人に囲まれているから安心感があります。同時に、東西の文化の交差点でもあるブダペストは、絶え間ないインスピレーションを与えてくれる街なんですよ」。
街を流れるドナウ川沿いを、愛犬と散歩する時間が何より好きだとサンドラさんは言う。自分の好きな街で、自分の手の届く範囲で幸せに暮らすこと。このローカルな考え方こそ、サステイナブルな時代を生きるためのひとつのヒントであるような気がした。
ちなみにナヌーシュカというブランド名の由来は、幼い頃、父親がサンドラさんに付けてくれたニックネームである。
Nanushka ナヌーシュカ
創業年:2005年
デザイナー:サンドラ・サンダー
本社所在地:ハンガリー・ブダペスト
直営店:ブダペスト、ロンドン、NY
Sustainable Keywords
・2025年までに100%サステイナブルな素材へ移行
・ブダペスト本社から300km以内で8割の製品を生産
・社内の組織変革と月1回のサステイナブル会議の励行
(※1)オルタナティブ
サステイナブル関連のレポートや報道で頻出する用語のひとつで、「持続可能な代替物」という意味で使用される。「オルタナティブ素材」「オルタナティブな物流形式」など。
(※2)TIPA社
2010年にイスラエルで創業。植物由来原料による、堆肥化可能な食品および衣料品用パッケージを生産している。
 
鈴木泰之=写真 加瀬友重=編集・文


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