当記事は「Forbes JAPAN」の提供記事です。元記事はこちら。米サンフランシスコ市は2019年、プライバシーへの不当な侵害への懸念から、警察による顔認識技術の使用を禁止した。
この技術をめぐっては、女性や黒人の認証精度が低いことで誤認逮捕を招くケースも発生し、IBM、アマゾン、マイクロソフトが相次いでAIによる顔認識事業から撤退。メタも10億人を超す顔画像データを削除すると表明した。
中国政府はAI技術を用いた統制を強めるが 、少数民族の弾圧に利用しているのではと、批判もある。欧州では、EUが今年4月にAI規制案を公表すると、産業界から「イノベーションが妨げられる」などの声が上がり、議論が沸き起こっている。
しかし、こと日本においては監視社会のデメリットが語られない。
そこで「議論のきっかけを作ろう」と活動を始めたのが、東京パラリンピックの開会式演出にも携わった、Dentsu Lab Tokyoの田中直基だ。
田中は2018年、AI作品制作などを手掛けるQosmoと組み、「AI によるラベリングから逃れるためのカモフラージュ」を開発するアートチーム「UNLABELED(アンラベルド)」を立ち上げた。
カモフラージュとはそもそも、敵から身を隠す軍事目的で作られたもので、アンラベルドはその現代版とも言える。
アンラベルドは10月、渋谷パルコで、そのカモフラージュを用いたファッションアイテムを展示。
ストリートファッションブランドである「NEXUSVII」とコラボレーションし、パーカーやトートバッグ、スケートボードなどを販売した。
今回製作されたアイテムにプリントされた柄には、AIに“誤認識”を起こさせる技術が使われている。カモフラージュ模様に特定の柄を重ねていくことで、物体検出システムの人認識率を下げる柄を生成したのだ。
展示場には、スクリーンが設置され、最近店頭にある検温モニターのように、人が映るとピンクの枠が現れ、“人”として認識された。
だが、アンラベルドが作成したカモフラージュ柄のトートバッグを持つと、AIが人と認識できなくなり、ピンクの枠は表示されなくなった。
AI社会を考えるきっかけに
田中の制作の原体験は広告にある。
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