その正体はいったい何でしょう?という質問に、玉井は即答した。
「氣、じゃないですかね。あれは氣が入ってて、そいつに引っ張られるんだと思う」。
もしかしてそれは、ゲンテンスティックに乗ったときに感じるものと同種だろうか。
「どうだろう。俺たちも、それなりの情熱と時間は注いでるけどね」。
だとしたら、氣は作り手の情熱や想い、ということだろうか?しかし玉井はこう言って笑うのだ。
「氣は氣、だよね。意識して作れるものじゃないと思う。そして氣に押されないことも大事で。モノはモノだから、使ってなんぼだと思ってる。だから手入れをして、いつでも使えるようにしていたい」。
孤舟の竿を振った小学生の頃と変わらず、今も同じ気持ちでアナログレコードに針を落とし、ツァイスを、ハンドメイドのバンブーロッドを、スペシャルシェイプのスノーボードをフィールドに持ち出す。
そうして新たな刺激を受け止めながら、次の創造へと情熱を傾けるのだ。
玉井太朗●1962年生まれ、東京都出身。北海道ニセコ在住。幼少の頃よりスキーに親しみ、サーフィンを経験。やがてスノーボードに巡り合い、競技者を経て’98年に「ゲンテンスティック」を創業。
www.gentemstick.com二木亜矢子=写真 林 拓郎=文 加瀬友重=編集