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地球一周を走りきるEVトラック

このトラックを作ったのは、ベン・スコット・ゲッデス氏。マクラーレンF1(F1界で名を馳せたマクラーレンの名を初めて冠した公道を走れる車)の開発に携わり、フェラーリではボディの軽量化・高剛性化に尽力した経歴を持つ。
そんな彼がトラックを作ろうと思ったのは、フェラーリで6年間を過ごしたあとのこと。次は地球を一周、北極から南極を通る陸路約5万6000kmを走破できるような遠征用車両を作ろうと本気で考えたのだ。
最も注力したのが、カナダからロシアまでの海氷4000km以上の移動だったという。燃料を積んだサポートカーと走るのではなく、ヘリコプターで吊るすのでもなく、一台きりで過酷な地形を走りきりたい。
だからこそ7000kmを無給油・無充電で走れるパワートレインと、修理が簡単な外板パーツを選んだのだ。
テスト走行の様子。地球一周を想定しているため、どの国でも交換が可能な標準サイズのトラックタイヤを装着できるようになっている。
このプロジェクトのために彼のもとに集まったエンジニアもまたスペシャルな人だらけ。
イギリス陸軍で将校を務めたあとに軍用車両や電気自動車のコンセプト作りに携わったキーラン・シングルトン氏、ベントレーやブガッティなどでデザイナーを務めていたデイビッド・シーリング氏、車だけでなくパワーボートやレーシングヨットの製造にも携わっていたクリス・ライト氏……錚々たる面子だ。
7000kmも走らなくていい遠征の場合は、燃料タンクの一部を取り外し、代わりに給水タンクを載せることができし、発電用エンジンがあるから、ジャングルでも照明など電気製品が使える。
水深140cmまでの川を渡ることができ、勾配60%の坂を登れて、500mmの段差を乗り越えられるという驚異のスペック。
顧客の要望に応じ、例えばアルコール燃料の利用が盛んなブラジルならアルコール燃料対応の発電用エンジンを、日本なら燃料電池を搭載できる。
あるいはバッテリー容量を増やすことも可能など、かなりフレキシブルな設計になっている。
電気モーターを2つ搭載。任意で2WD/4WDの切り替えることができる。
フェリング・パイオニアは2022年前半にはイギリスで量産が始まる予定。これに乗って地球一周する冒険野郎のニュースがその後に聞こえてきそうだが、いい波を探しながら無給油で日本縦断、なんて使い方も悪くないよね。
 
籠島康弘=文


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