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一躍人気商品となったUAスポーツマスクだが、昨年はほとんど広告を打たずに販売数を伸ばした。機能性の高さが評判を呼び、既存顧客はもちろん、新規顧客の需要獲得にもつながった。
「ECサイトのデータを見てみると、マスクで初めてアンダーアーマーの商品を買ったという人もかなりいらっしゃるんですよ。新規の獲得を狙っていたわけではないんですが、結果的にプロダクトのクオリティーで選んでいただけていますね」(松坂氏)。
新モデルを発売した今年は、GoogleやYouTube、SNSなどで広告を打ち出している。が、ターゲットを広く取るような広告戦略は行っていない。それはなぜか?
松坂氏は「トレーニング中や競技中にストレスなく着用でき、1%でもパフォーマンスを上げてもらうことがブランドのミッション。なので、基本的にはトレーニングや運動をしている人がターゲットです」とその意図を話す。
とはいえ、SNSやYouTubeを使った若年層へのアプローチはつねに意識しているという。アンダーアーマー直営店舗のひとつ「アンダーアーマーブランドハウス新宿」では、インスタグラムのライブ配信を使ったオンラインイベントを定期的に開催。スタッフによる注目商品の紹介や視聴者との質疑応答などを行う。
YouTubeでは松坂氏が企画した「NICE DOME」というチャンネルを運営し、商品企画担当者が実際に商品を着用しながらサイズ感や仕様などを紹介している。
「若年層を意識することで、ほかの年齢層への波及効果もあると思っています。例えば、若年層向けにプロモーションムービーをつくったとしても、ほかの世代の方々がそれを見たときに、昔を思い出して感化されたりしますよね」(松坂氏)。

コロナ禍でも運動できることを発信

現在はマスクが市場に多く出回っていることもあり、昨年に比べると販売数は落ち着きを見せている。しかし、それを悲観するようなことはない。
むしろ、「マスクが売れない状況のほうが世間的にはいいことですよね。もちろん需要に対する準備はしますが、来年以降も新作を出してどんどん売っていこうとは考えていません。それよりもいまは、コロナ禍でもマスクを着用して安心・安全に運動できることを発信しています」と松坂氏。
ライフスタイルモデルの栗原ジャスティーンさんも使用(アンダーアーマー提供)
今年の4月にはエニタイムフィットネスとタイアップし、「BACK TO GYM」というキャンペーンを開催。換気や消毒などによって丁寧にコロナ対策を行っているスポーツジムでの運動再開をアピールした。
また、密にならずにできる運動として、ランニングに関する発信も強化している。今年7月にドームの社員によるユニット「UAラビット」を結成し、デジタルコンテンツなどを通じてランニングの魅力を伝えている。
日本リサーチセンターとイギリスの調査会社YouGov社が、23の国と地域でマスクの着用率についてインターネットで調査したところ、「公共の場ではマスクを着用する」と回答した日本人の割合は2021年1月時点で90%、2月時点で88%と高水準だった。マスク着用が義務化されていないなかでも、日本人はマスク着用への意識が高い。
だからこそ松坂氏は、「アンダーアーマーのマスクはプロダクトとして優れているので、うまく活用していただき、お客さまにはコロナ禍でも安心・安全に運動してもらいたい」と強調した。
 
新妻 翔:フリーライター
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記事提供:東洋経済ONLINE


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