ジャンクな波が功を奏し、素人目にも面白い試合展開となった最終日
「波は次第にクローズアウトといえる、とてもタフなコンディションになっていきました。アクションを連発しながら乗りつなぎ、綺麗にまとめられる波はかなり少なく、大技のできる波を掴んだもの勝ち。そんな様相でした。
良い例がセミファイナルの土壇場で五十嵐カノア選手が見せた逆転ライディングです。世界チャンピオン経験者のガブリエル・メディナに終盤までリードを許しながら、ローテーションを入れた大きなエアリアルをメイクして9.33ポイントを獲得。状況を好転させました。
そして、あの1本は番組内でも盛り上がったライディング。サーフィンを知らない人が見ても“すごい!”と感じられたのですが、それはあの“ぐしゃぐしゃな波”があったからこそなんです」。
もしサーファー的に良い波を求め、ファイナルデイを翌日以降に行なっていたら。波はクリーンなコンディションになっていたが、数発のアクションによるコンビネーションで1本の波をメイクする試合展開となり、一般受けはしなかっただろうと小川プロは予測した。
「それにあのジャンクな波だったから、五十嵐選手も都筑選手もメダル獲得の可能性が膨らんだ、と言えます。実際、五十嵐選手にとってのガブリエル選手や、都筑選手が3位決定戦で戦ったキャロライン・マークス選手のように、今回2人が相手にしたのは世界のトップ・オブ・トップばかり。
キャロライン選手は2019年の世界ランキングが2位の選手です。それでも都筑選手は勝利し、銅メダルを獲得した。一因は波にあって、特に女子の海外選手はあの日の波に対応できていなかったように見えました。無難な波を選びがちだった彼女たちに対して、都筑選手は攻撃的な姿勢を崩さず、サイズの大きな波をキャッチしては怯まずに技を繰り出しにいった。そこの差が結果に出たように思います」。
加えて、海のなかで選手たちは波を選ぶのに必死だったのではないか、とも。
「相手選手をタクティクスで打ち負かすような発想も余裕も持てなかったと思います。誰にとっても勝敗の分かれ目は、自分の狙ったサーフィンができるか。その波を掴めるか否かだったんです」。
自然の波が舞台だからこそ起きたジャイアントキイリング。それもまたサーフィン競技の醍醐味なのだと、嵐の中のファイナルデイは教えてくれた。
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