OCEANS

SHARE

2021.10.05

時計

“クンロク”から「カラトラバ」になるまで。パテック フィリップの歴史を振り返る

パテック フィリップの最重要コレクション「カラトラバ」。不朽の名作である通称“クンロク(Ref.96)”から始まった伝説と褪せない魅力に迫る。
カラトラバ・ファミリーの錚々たる顔ぶれ。
カラトラバ・ファミリーの錚々たる顔ぶれ。

「カラトラバ」の原点“Ref.96”デビュー

1839年に始まったパテック フィリップ史上、1932年は最も大きなターニングポイントだ。
1930年代の世界恐慌はスイス時計業界に大きな打撃を与え、パテック フィリップも経営が困難になるほどの苦境に。
そこに現れた救世主が、文字盤の製造メーカーを営むシャルルとジャンのスターン兄弟だった。彼らは1932年にパテック フィリップの経営を引き継ぎ、再生へ向けて大きく舵を切る。
“ラウンドウォッチの模範”とされる「カラトラバ」。
この時代、パテック フィリップの時計製造の中心は懐中時計だったが、ビジネスの嗅覚に長けたスターン家と技術部長のジャン・フォスターは、腕時計が持つ可能性に賭ける。
そこで同年、スターン家の経営のもとで初めて発表された腕時計が、のちにカラトラバの原点となる「Ref.96」であった。このわずか30.5mm径のドレスウォッチを、パテック フィリップの歴代最高傑作に挙げる時計愛好家も少なくない。
始まりにして究極の1本「Ref.96」。
「機能がフォルムを決定する」というバウハウスの芸術運動から影響を受けたRef.96には、シンプルを通り越した独特のミニマリズムが息づく。
フラットベゼルを備えたラウンドケース、バトン型のインデックス、6時位置のスモールセコンドなどのディテールには、一切の無駄がない。
ちなみに、パテック フィリップがリファレンスナンバーを初めて採用したのがこのモデルであり、これを機にシステムとして確立される。
そしてもうひとつ、スペインの騎士団にちなんで命名された“カラトラバ”という名称が正式に採用されたのは、Ref.96の誕生から50年近く経った1980年代初頭であったことも付け加えておこう。


2/2

次の記事を読み込んでいます。