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2021.09.12

時計

時計界の絶対王者「ロレックス」。その王者たる理由を語れるか!?

コロナ禍も続く高級時計ブーム。なかでも人気はやはりロレックスだろう。
となると、我々は改めて知らなければならない、「ロレックスとはどんなブランドなのか?」。
独自の視点から生まれた革新的な腕時計の誕生に迫る。写真は1931年の初代オイスター パーペチュアル。© Rolex/Jean-Daniel Meyer
世界的に認知されている人気ブランドであることは誰もが知るところ。
一方でその歴史を辿ると、時代を切り開いたパイオニアとしての、知られざるロレックスの顔が見えてくる。
 

①誕生から見据えていた世界と未来

ロレックスはなぜ、“世界一有名な時計ブランド”になれたのか? その理由のひとつとして挙げられるのが、記憶に残るブランド名である。
今から遡ること100年以上の1905年、ロレックスの創立者、ドイツ人起業家ハンス・ウイルスドルフは腕時計に大きな可能性を見出し、イギリスで時計販売の専門会社、ウイルスドルフ&デイビス社を設立。
ロレックスの創立者ハンス・ウイルスドルフ。© Rolex
その後、スイスでブランド名「ROLEX(ロレックス)」を申請し、登録されたのは1908年のことだった。
ハンス・ウイルスドルフはブランド名を考案するにあたって、「‪短く、 5文字以内であること」「どの言語でも発音しやすいこと」「‪音の響きがいいこと」「覚えやすいこと」‪「ムーブメントとダイヤル上でも美しく見えること」という5つの条件を満たすことを掲げていた。
当時、宝石商や時計店の間では、ダイヤル上に店名を入れる慣習があり、納入者や製造業者の名が記載されることはなかったのだが、ハンス・ウイルスドルフは優れたネーミングの力によって、徐々に流れを変えていくことに成功する。
ちなみに、今では馴染み深いロレックスの王冠マークが登場するのは1931年と、もう少し先の話になる。
後世でハンス・ウイルスドルフが“マーケティングの天才”として語り継がれている理由は、このような類まれな先見の明にあるのだろう。
 

②時代が望んだ世界初の防水腕時計

ロレックスによる革新とはすなわち、“腕時計の進化の歴史”そのものである。
20世紀初頭は懐中時計が主流の時代。腕時計には実用面で多くの課題があり、特に防水性能、精度において信頼性は低かった。
そこへ商機を見出したハンス・ウイルスドルフは、これらの課題と真摯に向き合い、1926年、ロレックスは「オイスター」と命名した“世界初の防水腕時計”を発表する。
さまざまな形状のケースが展開されていた1926年頃のオイスター。© Rolex/Jean-Daniel Meyer
このモデルが何よりも画期的だったことは、ねじ込み式のベゼル、ケースバック、リュウズを採用した独創的な設計によって、水や埃の侵入を防ぐ完全密閉の「オイスター」ケースを採用したことにある。
ベゼルやケースバックに見られるフルーティング(刻み)は単なる装飾ではなく、専用の工具でねじ込むために考案されたものだった。
1927年、メルセデス・グライツというイギリス人女性がロレックスの防水腕時計「オイスター」を着用し、イギリス海峡を泳いで渡った偉業は‪有名なエピソードである。
イギリスの新聞『デイリー・メール』に掲載されたロレックスの全面広告。© Rolex
時計は10時間以上も水中にあったが、完璧に動き続けていた。これにより腕時計の防水性能が証明されたのだ。
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③自動巻き機構の発明

1910年に‪スイス・ビエンヌにあるスイスクロノメーター歩度公認検定局から腕時計として世界で初めてクロノメーターの公式証明書を獲得するなど、ロレックスはオイスターケースの開発以前から精度に対する探求も続けてきた。
その努力が結実し、1931年に誕生したのが、自動巻き機構「‪パーペチュアル」である。
1931年の初代オイスター パーペチュアル。© Rolex/Jean-Daniel Meyer
手首の動きをとらえて360度回転する‪半月型のローターによりゼンマイが巻き上がる独自のシステムは、1924年にジョン・ハーウッドが考案した半回転ローターの自動巻き機構を精度の面で大きく上回った。
1931年当時の、ロレックスの自動巻き機構「パーペチュアル」。© Rolex/Jean-Daniel Meyer
さらには、手巻きが不要となることで、ねじ込み式のリュウズを緩めずに安定した精度を保つことができ、また防水・防塵においても大きな利点を生んだ。
オイスターケースとパーペチュアルの開発によって、ロレックスは精度と信頼性を高めることに成功し、自動巻き腕時計の普及に大きく貢献していくことになる。
 

④革新的なカレンダー機構を備えたオイスターウォッチ

1945年に発表された「デイトジャスト」は、オイスターケース、‪パーペチュアルローター、さらには革新的なカレンダー機構を兼ね備えた次世代を担うオイスターウォッチの完成形を示した。
特徴的な‪フルーテッドベゼルとジュビリーブレスレットが採用された初代デイトジャスト。© Rolex/Jean-Daniel Meyer
デイトジャストが登場する以前、腕時計の分野でカレンダー機構が存在しなかったわけでない。それどころか、「永久カレンダー」を搭載した記念碑的な傑作がすでに登場していた。
アブラアン-ルイ・ブレゲが1795年に考案した永久カレンダーは、1461日(4年)をサイクルとする機械を搭載することで、28日、29日(閏年)、30日などの月により異なる日数を忠実に再現するメリットを持つ一方、緻密な設計も相まって調整はそれなりに手間がかかる。
それに対してデイトジャストに搭載されたカレンダー機構は、午前0時になると日付の表示が切り替わる新たな機能と、リュウズのみで簡単に調整できる優れた操作性に特徴があった。
ここからもわかるように、ロレックスの革新性とは、腕時計に必要とされる実用性をシンプルに追い求めたことにある。
 
その後もロレックスは時代を先読みしながら独自路線を歩んでいき、1950年代に入ると、今なお時計市場を席巻し続けるプロフェッショナルウォッチの主要モデルを続々と世に送り出す。
そのお話は、また次回。
 
戸叶庸之=文

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