カジュアル靴の頂点であり、ブランドを象徴する1足であるグッチの「ホースビット ローファー」。オーシャンズ世代にとっては、若かりし頃に思い描いた大人の象徴的存在だったのではなかろうか。
ここで紹介するのも、青春時代にこの靴に憧れを抱いた2人による“ホースビット”ストーリー。あの頃と今、変化した自分と変わらぬ想いを語ってもらった。
「ファッション通信」プロデューサー
神保 誠さん Age44
ラグジュアリーブランドから楽天ファッションウィーク東京などの記録画像なども手掛けている。今気になるアイテムは斜めがけバッグ。
僕にとって、グッチの「ホースビット シューズ」はひと言で表現するならば“青春”そのものです。
高校生がメインの雑誌「東京ストリートニュース」が大流行し、周りにはその巻頭や誌面に登場する同級生がゴロゴロいて、原宿や渋谷のクラブでパーティを開いていたりしました。また、学校が私服OKだったこともあって、コム デ ギャルソンなどのモード系から、ワーク、古着、サーファー、スケーターなど多種多様な格好をした友人がいました。
そんな環境も相まってファッション好きになるのですが、まだまだ自分自身のスタイルは迷走中……。ただそんな中でも靴にはこだわりを持っていました。流行りのスニーカーはもちろんですが、クラークスやティンバーランド、レッド・ウィングなどの革靴が大好きでした。
でも密かにいちばん憧れていたのはグッチの「ホースビット シューズ」。キムタクに似ていて格好いいと言われていた同級生のO君が、当時高校生ながらテレビに出て、足元を彩っていたのもグッチの「ホースビット ローファー」でした。うーん、僕も履きたいし、何より羨ましい!
そしてついにそのチャンスが訪れたのは、1995年の高校卒業間近の冬休み。僕は両親と香港旅行に訪れていました。その時期の香港は、街全体がセールで活気づいていますが、僕のテンションも最高潮です。
ケンタッキーフライドチキン練馬駅前店でバイトして貯めたお金を握りしめ、いざグッチの店へ!そこでお買い得にゲットしたのは、黒レザーに金のホースビットを配した靴。あえてミッドカットをチョイスしました。
冬休み明けには、黒の詰襟制服にこの靴を合わせ、誇らしげに登校した自分を今でもよく覚えています。
そして、購入して26年の月日が経った、今年2021年の7月。グッチ100周年を記念した京都でのイベントに、久しぶりにこの靴を履いて出かけました。僕なりにグッチのルーツを重ね合わせたつもりです。
実はオーシャンズの江部編集長が、この靴を見てすぐに昔のモデルだと気付いてくれたことが、とてもうれしかったエピソードにもなっています。
現在はファッション番組を制作していますが、この靴を見るとなんだか甘酸っぱくて、あのキラキラしていた時代や憧れを想起させます。「初心忘れるべからず」。この靴は純粋にファッションを追っかけていた自分に戻してくれるタイムマシンみたいなアイテムです。
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