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「本場の朝ごはんの味」にかけるこだわりは、日本に住む外国人から「現地の味」というお墨付きをもらうまでは料理を提供しないと決めているほどだ。毎回のメニュー開発には2カ月の時間をかけている。
レギュラーメニューの台湾の朝ごはん。豆乳のスープ「鹹豆漿(シェンドウジャン)」を中心に、人気の3品が盛られている
メニューの選定にも、日本の季節の感覚に基づいたこだわりがあるという。
「日本は四季がはっきりしていますよね。暑いときは体温を下げるものを、寒いときは体温を上げるものが食べたくなります。だからメニューを決めるときにも、季節にあわせて、夏には気温の高く暑い国のメニューを、冬には気温が低く寒い国のメニューを選ぶようにしています。その国ならではの伝統行事の時期に合わせることもあります」
各国の大使館は、現地の情報を発信し、観光客を呼びこむことも大きな役割の1つだ。これらの活動が店のコンセプトともリンクするためか、大使館側から自分の国の朝ごはんをメニューに加えてほしいとオファーが来ることも少なくないという。
さらに、WORLD BREAKFAST ALLDAYは、料理の提供以外にも、その国の文化を知るためのイベントを開催してきた(現在はコロナ禍により開催は中止)。料理教室をはじめ、トルコの習字(カリグラフィー)教室や装飾品をつくる会、演奏会など、ラインナップはさまざまだ。

朝ごはんを通じて世界に想いを馳せる

コロナ禍以降の来店者のニーズの変化についても聞いた。
「海外旅行に行けない人が増えているので、やはり海外旅行気分を求めに来る方は増えたと思います」
他にも、今まで全体の2、3割を占めていた海外からの観光客や、故郷の味を求めに来る日本在住の外国人客が減ったり、来店時間が全体的に遅くなったりするなどの変化があったという。上記の変化には、海外との行き来が難しくなったり、在宅ワークの浸透などの社会の変動が少なからず影響しているのだろう。
今後は、新たなサービスとして料理キットの販売も考えているという。
「来店が難しい人のために、家庭でつくれる世界の朝ごはんの料理キットを提供したい。朝ごはんなので比較的簡単につくれると思いますが、材料は手に入りにくいものが多いと思うので」
8月から9月までの新メニュー、スウェーデンの朝ごはん。メインは、小エビがたっぷり乗ったオープンサンド「レックマッカ」だ
「『その国らしい』と言われる郷土料理や街並みというのは、特定の作者がつくったものではありません。土地の文化や気候によって、少しずつ形作られていくものです。昔からそういった食文化について奥が深くて面白いなと感じていました。この店が提供する朝ごはんを通じて、その面白さに共感して楽しんで頂けたらと思っています」
国境を越えて自由に移動することが難しい今だからこそ、朝ごはんを通じて世界を体感する機会がより新鮮に感じられる。
8月2日からは、新たにスウェーデンの朝ごはんを提供中だ。現地に想いを寄せながら、世界各国の朝ごはんを楽しむ。そんな朝から一日を始めてみるのもいいかもしれない。
 
島田早紀=文
記事提供=Forbes JAPAN


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