スバルの本拠地である群馬はその条件から少しずれており、また群馬では探しても対象となりえる場所が見つからなかったという。
そうした中、鴨川市嶺岡(みねおか)キャンプ場の存在を知り、現地を視察したのが今年4月だ。それから鴨川市に問い合わせると、すでに閉鎖されており管理運営は地元の細野地区が行っていることを確認。細野地区区長の川木利夫さんに早速コンタクトした。
突然やってきた話だったが、川木さんは「渡りに船、いい話だ」と思ったという。
2015年にキャンプ場が閉鎖されて以来、敷地内にある愛宕神社を守るために周囲の管理は続けられてきたが、地域の人たちは「キャンプ場がこのままの状態で放置されるのはもったいない」という気持ちをずっと持っていたそうだ。
これまで再利用についての問い合わせはなく、今回のスバルが初めてだったというから、まさに「渡りに船」だったのである。
細野地区の山林は広大で、SUBARU里山スタジオで使用する地域は53区分あるため、地権者が多いが、この地の再整備について異議はなく、2021年6月上旬に1年間の賃貸契約を結んだ。
そして、地域の人たちが導入路の草刈りを手伝うなどして、6月中旬にプレオープンとしてメディア向けの最初の撮影会を開催。スバル関係者が現地視察してから、たった2カ月後の出来事だ。
川木さんは「我々としてはなるべく長く利用してもらいたい」とスバルとの継続的な付き合いを希望している。
嶺岡牧の歴史を感じながらゆったり森林浴
細野地区はこれまで、吉尾村、長狭町、そして鴨川市と市町村合併してきた。さらに歴史をさかのぼると、SUBARU里山スタジオの敷地内は、嶺岡牧(みねおかまき)があった場所でもある。
嶺岡山地の尾根や斜面を活用した馬牧が奈良・平安時代から始まり、江戸時代には嶺岡牧として、その周囲に近隣で切り出した石を使った全長80kmにも及ぶ壁が築かれた。いまでもその名残がある。
そうした歴史の息吹を感じながら、現行のフォレスターにogawaのテント「カーサイドリビングDX-Ⅱ」、JVC KENWOODのポータブルバッテリーと太陽光パネル、小型冷蔵庫、小型扇風機など、筆者が個人で所有するアイテムを持ち込んでデイキャンプをしてみた。
気温は30度を超えていたが、森の中を抜ける空気は心地よい。
一般的なオートキャンプ場では味わえない、実に有意義な時間であると同時に、“人と自然”が触れ合う中でのクルマの在り方をじっくり考えることができた。
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