すべての車が“流線型”になる前。カクカクしたセダンがメインストリームの時代があった。
なかでも、堂々とした威厳を感じるドイツメーカーのセダンは特別で、今、通好みな選択として人気を持つ。
■アウディ「80/90」
アウディの80といえば、3代目がバブル時代に「ベンツでもビーエムでもなく」という層に選ばれ、若い女性にも人気があった。
しかし、そのひとつ前の2代目も世界的に大ヒットを記録し、今日のアウディの礎を築いた名車のひとつだ。
2代目のパリッとしたカクカクなデザインを手掛けたのは、プロダクトデザイン界の巨匠ジウジアーロ。
2代目がエポックメイキングなのは、セールス成績やデザインだけではない。このモデルをベースにアウディ クワトロが生まれたことだ。
カクカクしたセダンを3ドアのハッチバックスタイルに変え、今や同社の代名詞となる4WDシステム「クワトロ」を搭載し、ラリー界を席巻。アウディの名声をさらに高めることになった。
1984年のマイナーチェンジで80の上級モデルとして90も追加された。見た目は80とほぼ一緒だが、より排気量が大きなエンジンを搭載。80、90とも日本にもヤナセによって正規輸入されていた。
■メルセデス・ベンツ「190E」
上級モデルのSクラスがバンバン売れていたバブル期の日本では「小ベンツ」なんて揶揄されたこともあったけれど、今見るとその小ぶりなサイズ(日本の5ナンバーサイズ)がむしろちょうどいい。
当時のトヨタでいえばコロナなみのサイズで、価格はクラウンより高かった。
四角いボディに四角いライト、そして門扉のような堂々としたグリルは、当時の高級車の代名詞であった“ベンツ”を象徴するようなフォルムとして、当時も今も独特の存在感を放つ。
Sクラスと違うのはサイズだけ、といえるくらい品質は同等で、実際Sクラス譲りのボディ構造や安全装備を備えていた。
それどころかSクラスより先に、世界初となるマルチリンク式サスペンションが採用されるなど、「最も良いものが作れないのなら、いっそ作らない」という同社の技術の結晶と言える一台なのだ。
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