名門と呼ばれる時計ブランドは一朝一夕にはならない。
時を刻み続ける時計と同様、止まることは許されず、独立系ブランドであれば世代交代は重要な節目だ。だがそれはエポックメイキング誕生の歴史的瞬間でもあるのだ。
1970年代、時代の変化の荒波にさらされていたスイス時計において、パテック フィリップのフィリップ・スターン(現名誉会長)はひとつの決断を下した。
それは台頭するクオーツに対し、新たな価値観を持った機械式自動巻きムーブメントを作ること。それも超薄型で、最小化したマイクロローターを地板の厚みに収めるという画期的な発想だった。
すべてに優先し、わずか半年という異例の開発スピードでこのキャリバー240を作り上げ、発表数年後、社長に就任したのである。
このムーブメントが名作と称される理由は、薄さと実用性を併せ持ち、軽快な装着感とデザインの自由度を増すばかりか機能の拡張性にも優れていたことだ。
その実力は’84年に登場した永久カレンダーモデルに搭載され、明らかになる。ベーシックとコンプリをつなぐ。フィリップにはその計画が当初からあったのだ。
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