パテック フィリップの「ノーチラス」はなぜ、ここまで圧倒的な人気を誇るのか?
その理由を的確に答えよ、と問われて淀みなく言葉を発せられる人はどれだけいるだろう。だから改めて振り返りたい、その軌跡を。
スーツにもウエットスーツにも似合う時計
1969年12月に発表された世界初のクオーツ式腕時計「クオーツ アストロン」によって、1970年代、機械式時計業界は転換期を迎える。
昨今、“ラグジュアリースポーツ”と呼ばれるジャンルが誕生したのもこの時代であり、そこには一人のキーマンがいた。1972年、オーデマ ピゲの「ロイヤル オーク」を創作したプロダクトデザイナー、ジェラルド・ジェンタである。
1976年に誕生した「ノーチラス」も彼の代表作で、「ウエットスーツにもディナー用のスーツにも似合う」という革新的なコンセプトのもと、ステンレス製の高級スポーツ時計が提案された。
40mm径のケースサイズから“ジャンボ”の愛称で親しまれている、初代ノーチラス(Ref.3700/1A)を例にとってみよう。
丸みのある八角形のベセル、ベゼルをネジ止めする両サイドのヒンジ部分、水平エンボスの文字盤、ケースとブレスレットを一体化させたアヴァンギャルドな顔立ちは、決して受け入れやすい時計ではなかった。
しかし「カラトラバ」がそうであったように、パテック フィリップが志す腕時計のデザインとは未来を見据えたものであり、「ノーチラス」の先見性は大きな可能性を秘めていた。
当時としては驚異的な120メートルの防水性能とラグジュアリーな外観を併せ持つスポーツウォッチは、熱狂を巻き起こしながら世界の常識を徐々に変えていく。
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