40年を経た今も鮮明に思い出すサーフショップのボスの言葉
ブレンドンさんの出身はニューヨーク州ロングアイランド。そのほぼ中央に位置するグレート・サウス・ベイで育った。大都会マンハッタンからクルマで約1時間ほど。子供の頃は多くの時間をビーチで過ごしたという。サーフィンを覚えたのも、もちろんこの場所だ。
「環境問題について興味を持ったのは14歳の頃でした。当時私が働いていたサーフショップのボスが、サーフ産業やサーファーたちの活動についていろいろと教えてくれたんです」。
1980年代半ばの話である。そのボスは「サーフィンに関わる企業は、環境を守るために先陣を切って行動しなければならない」と、常々話していたそうだ。その行動ひとつで、環境は復活もすれば悪化もするのだと。彼は大手アパレル企業が発送の際に毎回詰めてくる「発泡スチロールの緩衝材」について、心底怒っていたという。
「そもそも服はワレモノではありませんからね(笑)。あの緩衝材は何の理由もなくゴミとなる“公害そのもの”だったと思います」。
こうしたブレンドンさんの実体験は、ノアのモノ作りに大きな影響を与えている。第一にサーフィンそのものから受けた影響だ。ボードショーツのラインナップはサーフアパレル並みの充実ぶり。服だけではなく、オリジナルのサーフボードやサーフワックスまで販売している。
サーフィンは、海や水に関する環境問題にセンシティブに反応する心を育むアクティビティでもある。海洋汚染の一因となっている使い捨てペットボトル。そのペットボトル削減の一助となるアイテムとして取り扱っているのが、「mizu」のステンレスボトルだ。
「もちろん私たちの取り組み自体は小さなものです。でも“ペットボトルを購入しない”という選択が少しずつでも増えていけば、大企業はペットボトルの生産をやめざるをえないでしょう」。
またアパレル企業は宿命的に、流通から販売の段階までプラスチック由来の大量の梱包材や緩衝材を使う。ノアも例外ではないが、過剰包装をやめ、輸送時のビニールは土に還る素材などを試しているという。
また購入時のショッパーにはリサイクル紙を使用。きっと14歳の頃に聞いたサーフショップのボスの怒りの言葉が、ブレンドンさんの頭のどこかに引っかかっていたのだろう。
リサイクルをキーワードとした“サステナ服”も多数ラインナップする。リサイクルキャンバスを使用したトートやボストンバッグに、リサイクルナイロンとリサイクルカシミヤの中綿を使ったパフジャケット。
カラーバリエーション豊富なリサイクルコットン100%のTシャツは、今やノアを代表するアイテムと言っていい。
「モノとしてのクオリティも素晴らしいと自負しています。柔らかすぎず、少しだけ重くて、適度なフィット感がある。何度洗っても形崩れしない。若い頃に着ていたTシャツを思い出します」。
環境問題への配慮と、リサイクル素材の積極的な活用。そしてサステイナブルに対する視点として大事にしているのが「長く着られる服を作る」ことだ。つまりトレンドに左右されない、高品質でタフな服。
例えば定番商品のラガーシャツやデニムがそれだ。
ひとつの服を長く大切に着れば、おのずと無駄な消費が減るというわけである。
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