高級時計の世界では、かつてないスポーツウォッチのブームが到来中。オークションハウスでの競売、セカンダリーマーケットでの価格高騰から熱狂ぶりが見て取れる。
その中心にいるのがパテック フィリップの「ノーチラス」であり、ここで紹介する「アクアノート」である。
「アクアノート」誕生の1997年、よりもう少し時を戻しつつ、なぜこれほどの人気を獲得したのか、その魅力を紐解きたい。
「アクアノート」はパテック フィリップ“第2のスポーツウォッチ”だ
「アクアノート」の系譜は、1996年に発表された「Ref.5060/SJ」が始まりである。下の写真がそれだ。
ブランド初のスポーツウォッチ「ノーチラス」の文脈をなぞる八角形のベゼルを踏襲したこのモデルは、イエローゴールドケース、革製のストラップ、ローマンインデックス、リーフハンドといった特徴を備えていた。
当時、パテック フィリップの社長であったフィリップ・スターンは、365日季節を問わず、あらゆるシーンで着用できる新たなスポーツウォッチに将来性を見出していた。
そこで翌年、ステンレススチール製の「Ref.5060A」で新たに導入したのが、今では「アクアノート」の象徴になっているチェッカーボード・パターンが刻まれたコンポジット素材のストラップだった。
これに加えて、エンボス文字盤、太いバトン型のインデックス、ゴシック体のアラビア数字、スーパールミノバ夜光塗料を塗布した大型のバトン型指針などの「アクアノート」の原型となるデザインが完成。
よりスリムなバックルを手掛けるために、開発と着用テストに数年費やしたという尋常ではないこだわりを随所に詰め込んで、パテック フィリップ第2のスポーツウォッチが誕生したのである。
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