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2009年、ダイワ精工からグローブライドに社名変更したタイミングで、クリエイティブディレクター、佐藤可士和氏の協力のもと「DAIWA(ダイワ)」のブランドロゴも一新。少子高齢化で、若い釣り愛好家を増やしていかなければ会社に未来はない。
釣り人口の裾野を広げブランドを知ってもらうために、グローブライドは12年前にすでにアパレル強化の方針を打ち立てていた。
入社以来通算33年釣り具畑のグローブライド小林謙一執行役員。ハイファッションの世界の人々のなかに飛び込み研鑽を積んだ(筆者提供)
が、道のりは平坦ではなかった。「山ガールブームの次に釣りガールの時代がきたと思った矢先、東日本大震災が起こり、レジャーどころではなくなった。数年間は低迷した」と小林氏は言う。
再起をかけ、2017年に立ち上げたのがハイファッション路線の「D-VEC(ディーベック)」ブランドだ。当時は「ザ・ノース・フェイス」、「パタゴニア」などアウトドアメーカーの機能性ウェアが、「街着」として注目を集めていた。
それだけに「ウチが同じことをやっても二番煎じで終わってしまう。ならば、高機能アウトドアウェアの要素は一切出さず一気にファッション路線に振り切ろうと考えた」(小林氏)。見事な逆張り戦略ともいえる。
小林氏らは、LVMHモエヘネシー・ルイヴィトン、ヨウジヤマモトといったハイブランドファッション業界で活躍する人材をディーベックのディレクターやデザイナーとして迎え入れた。店は原宿に構え、国内のファッションショーや、イタリアの展示会にも出展。並々ならぬ本気度がうかがえる。
とはいえ、ハイファッションに一気に振り切ったからこその壁もあった。ファッション業界の人々の間では「ダイワはアパレルもやっている」と認知されたものの、一般消費者にはなかなか認知が進まなかった。

ヒットの裏に老舗セレクトショップの戦略

そんななか新ブランド「ダイワ ピア39」がスタートした。冒頭の行列もECでの売れ行きも、ある黒子の存在が大きく影響を与えている。セレクトショップ「BEAMS」を展開する、ビームスがデザインや宣伝を担当しているのだ。
実は今、ビームスは服を売るだけではなく、BtoB事業にも力を入れている。セレクトショップ運営で得た企画力を生かし、企業や自治体の商品開発から宣伝までを請け負っているのだ。これまでに福島県、メルセデス・ベンツ日本、新宿ゴールデン街などとタッグを組んできた。
ビームスとグローブライドが協業をスタートしたのは2019年3月。プロジェクトを統括したビームスの日高正幸氏は「フィッシング会社のアパレルの存在を、ファッション好きのトレンドリーダーにどうやって知ってもらうかが鍵だった」と振り返る。どれだけかっこいい服を作っても戦略がなければ売れないというわけだ。
まずは発表のタイミングを計った。「当時、“フィッシング”が流行り始めていて、アパレルでもフィッシングベストが売れていた。ファッション感度の高い人に“フィッシング”のキーワードが刺さるうちに届けようと、タイトだったが20年春夏シーズンの発表を決めた」(日高氏)。


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