当記事は「東洋経済ONLINE」の提供記事です。元記事はこちら。メンズファッションの聖地「新宿伊勢丹」では、今年2月とあるアパレルブランドのポップアップ(期間限定)ショップに200人近くの行列ができていた。
アウトドアテイストのパーカーコートやベストなど並べられた商品は即日完売。4月に立ち上げたECにも注文が殺到し、サーバーがダウンしたほどだった。
「蒸発するように売れ、正直驚いた」と話すのは、このアパレルブランド「DAIWA PIER39(ダイワ ピア39)」を展開するグローブライドだ。
グローブライドの社名より、釣り具メーカー「DAIWA(ダイワ)」のほうがピンとくる人は多いかもしれない。直近5月13日に発表されたグローブライドの2021年3月期決算は、前年比で売上高は13%増、営業利益は前年の36億円から74億円と約2倍に拡大し最高益を更新している。
密閉・密集・密接という「3密」を避けるアウトドアレジャーとして釣りが支持を広げたこと、全世界で自然志向が高まったことを背景に、コロナ禍にあって飛ぶ鳥を落とす勢いの好業績だ。
そんなグローブライドのアパレルが売れている。ワークマン、ユニクロといった勝ち組以外はアパレル不況と言われているのに、なぜ釣り具メーカーの服がヒットするのか。取材をすると、意外な「黒子」のしたたかな戦略が見えてきた。
街着として普段使いできる「フィッシングベスト」
昨春デビューして以来、「ダイワのアパレル、かなりかっこいい」「どういった経緯でアパレル部門がよくなったのか気になる」。SNSでこんな声が上がるようになった。
ウケる理由は、デザインと機能性にあるようだ。パーカーコートやベストは身幅をゆったりととり、オーバーサイズシルエットで着る。生地は防水透湿素材の「ゴアテックス」で、触ると柔らかい。
ジャケットの内側には大小のポケットがつき、手ぶらで街を歩ける感じもいい。デザイナーは、ポケットが多いフィッシングベストからアイデアを得たという。
アパレル以外を本業とする会社が、アパレル事業を立ち上げるのはそう珍しいことではない。だが、釣り具メーカーがアパレルとは意外な感じもする。
東京・東久留米市にあるグローブライドの本社を訪ねると、小林謙一執行役員が迎えてくれた。北海道大学水産学部卒、入社以来通算33年釣り具畑できたが、経営企画室室長を経て今はアパレル部門を統括する。「もともと40、50年前から釣り用のレインウェアは作っていた。でも、ダサかったというか、作業着の感じが抜けなかった」(小林氏)。
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