大学入学を機に上京したのちも句作を続ける。
「何度も引っ越しましたが、中でも高円寺への思い入れがいちばん強いです。高円寺は何の目的もなく歩いていても浮かない(笑)」。
20代のころから通っていて、今もときどき覗く飲食店は路地裏にある「ワインやさん なつこ屋」さん。ワインが素晴らしく、料理が美味しく、店主のなっちゃんとも仲がいいという。
「あ、ここもすごく美味しくて、賄いを目当てに働いているようなものです(笑)」。
そんな賄いを作るのはオーナーシェフの志田真澄さん(42歳)。
「飲食店なので、飲んで食べるのが大好きという点がまず最高。俳句の話も含めてトークが上手なので、一緒に働いていて楽しい。隣にいてくれるとモチベーションが上がりますね」。
ここで、佐藤さんが強調する。
「看板娘の連載ですが、うちの『看板』は完全に志田さん。人柄も面白いし、好奇心が旺盛なので、俳句の話を振ってもちゃんと返ってきます」。
そんな佐藤さんが最近ハマっているのが「宝塚」。
「私は人の顔を眺めるのも、人の歌を聴くのも、人が身体で表現しているのを見るのも好き。それを同時に鑑賞できるのが宝塚なんです。明後日の花組公演も行ってきます(笑)」。
お店は常連客や周囲の人々にも恵まれている。コロナ禍でごはんソースとパスタソースを真空パックで冷凍したものを販売しようと思い立った志田さん。
プロの味が家でも楽しめるという嬉しい通販だ。
お会計をしようとしたタイミングで、壁に掛かっている数枚の絵が気になった。志田さんに「ずいぶん写実的な絵ですね」言うと、「あれはカメラマンの友達が撮った写真なんです」。
というわけで、佐藤さんお会計を。その前に読者へのメッセージもお願いしますね。
【取材協力】COSHIRAE(コシラエ)住所:東京都世田谷区三軒茶屋2-43-20 錦ビル1F電話:03-6453-4577www.coshirae.net「看板娘という名の愉悦」Vol.154好きな酒を置いている。食事がことごとく美味しい。雰囲気が良くて落ち着く。行きつけの飲み屋を決める理由はさまざま。しかし、なかには店で働く「看板娘」目当てに通い詰めるパターンもある。もともと、当連載は酒を通して人を探求するドキュメンタリー。店主のセンスも色濃く反映される「看板娘」は、探求対象としてピッタリかもしれない。
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石原たきび=取材・文