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阿部は当初からの事業戦略をこう語る。
「農作物を扱う他のオンラインショップと競争しようとしているのではなく、『サッカー好き』が僕らのターゲット。普通、応援しているクラブ以外のグッズを買ってもらうことはないですが、サッカークラブが地域課題の解決に向けて作っている農作物ということで、他クラブのサポーターにも購入してもらえる状況ができています」
アスパラガスを収穫する福島ユナイテッドFCゼネラルマネージャーの竹鼻快(左)ら
また、活動を通じた地元農家との繋がりは、ビジネス以外にも広がっている。農作業を通した選手と農家の交流が、クラブと地域の関係性が密接になる機会を作っているのだ。
樋口選手は「農家さんとたわいもない世間話をしたり、作業後に一緒にお茶をしたり、コミュニケーションを取る機会が増えています。その中で知り合った方がスタジアムに訪れて試合を見に来てくれることもある。そうした人たちが来てくれるからこそ、サッカーもよりがんばろうと思うことができています」と語る。
今年で選手歴11年目の樋口選手。プロスポーツ選手としてのセカンドキャリアに向けた正直な想いも、農業部に取り組むモチベーションに繋がっているという。
「段々とサッカーだけをやっていればいいという歳ではなくなってきていて。いち社会人としてサッカー以外の知識を増やしたい、人として成長したいという思いの中で、積極的に農業部の活動に携わらせてもらっています」

深さを持って、全国へ福島産農作物の魅力を発信

はじめは農業への風評被害を解決するために始まった取り組みが、新たなビジネスとして、クラブと地域の交流の機会として、選手が人間性を高める場として、広がってきた福島ユナイテッドFC農業部の活動。樋口選手は農業部長として「継続性を持ちながら、より活動を展開していきたい」と意気込みを語る。
「この事業も時間が経ってきたことで、地元農家さんの温度感に合わせながら、福島産の農作物の魅力を発信することが一番の目的になってきています。農家さんたちの信頼を積み重ねながら、とにかく長く事業を続けられたらと思っています」
今年4月初旬、桃の木が開花し、余分な花を摘みとる作業をする樋口選手。おいしい桃を育てるため、ひと手間を惜しまない
その中で大切にしていくのは、広がりではなく深さ。これからは単に農作物の種類を増やしていくのではなく、いま育てている野菜や果物への知識や経験、地元農家との繋がりを深めながら、福島産の農作物の魅力をより多くの人に発信していくことを目指しているという。
「僕たちはサッカー選手なので、練習や試合のことを考えるとむやみやたらに種類を増やすことはできない。これからは深みをもたせていきながら、全国のみなさんに福島のおいしいものを届けられたらいいなと思っています」
福島ユナイテッドFC農業部では、福島の桃やりんご、米などが届く農産物の定期便(1万円から)を、6月30日まで予約受付している。高い糖度と芳醇な香りが特徴的な洋梨「ル・レクチェ」や「高尾」という高級品種のぶどうなど、希少な果物も予約販売されている。コロナ禍でなかなか出かけづらいからこそ、産地直送の果物や野菜を味わうのも楽しいだろう。
これから旬を迎える桃と10月中旬に収穫される洋梨「ル・レクチェ」
◾️「2021 Jリーグシャレン!アウォーズ」各賞はこちら
・ソーシャルチャレンジャー賞:横浜F・マリノス、アルビレックス新潟
・パブリック賞:福島ユナイテッドFC、清水エスパルス
・メディア賞:ガイナーレ鳥取
 
宮本拓海=文 督あかり=構成 福島ユナイテッドFC=写真
記事提供=Forbes JAPAN


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