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インテリアはエルメス


ファントム・オリベのドアを開けると、そこに広がるのはエルメスの世界。
馬具職人が用いているステッチやエッジ・ペイントの技術を使ってレザー張りを仕上げるなど、乗馬具メーカーからスタートしたエルメスのノウハウがファントム・オリベのインテリアに注ぎ込まれた。
フロントシートはホワイトレザーで、前澤氏が座ることになるリアシートは、ボディのMZオリベ・グリーンとマッチするエルメスの「エネアグリーン・レザー」が用いられている。
またドア・アームレストとセンター・コンソール、リア・コンソール、そしてヘッドライナーにエルメスの「トワルアッシュ」キャンバス地が採用された。

もちろん、ロールス・ロイスの職人技も随所に光る。
例えば木製スピーカーグリルやドアに貼られたロイヤル・ウォールナットは、木が水分を通す孔(導管孔)を敢えて樹脂などで塞がずに、ウォールナットの質感を活かした仕上げに。このウッドパネルに丁寧に穴あけ加工が施され、継ぎ目のない美しい木目と繊細な手触りを生み出した。
またロールス・ロイスは独自の工夫を凝らしたダッシュボードを「ギャラリー」と呼ぶが、このファントム・オリベでは、エルメスがその世界観を遺憾なく発揮している。
このギャラリーのためのアートワークは、エルメスのスカーフデザインを数多く手掛けたフランス人アーティスト、ピエール・ペロンのデザインをもとに作成された。
印象的なエルメスの“馬”にインスパイアされたこの作品は、ロイヤル・ウォールナットに手描きされている。
ダッシュボード(ギャラリー)の下に備わるグローブボックスの蓋部分には「Habillé par Hermès Paris(エルメスによる装飾)」の文字が刻印されている。
気になるのはお値段だが、もちろん明かされていない。そもそもこの手の特注品はメーカーと顧客、双方の信頼で成り立つ。そのため発注段階で価格の話は一切なく、後日、完成してから初めて請求書で金額を知ることになるとか……。
前澤氏はこのファントム・オリベを、陸のプライベートジェット「ランドジェット」として、プライベートジェットまでの移動手段に用いるとしている。
それもあり、ロールス・ロイスがこのために開発したMZオリベ・グリーンの塗料は、前澤氏が同時期にオーダーしたプライベートジェットにも使用することが許可されている。これもロールス・ロイスとしては異例の対応で、前澤氏のVIPぶりが伺い知れる。
ロールス・ロイスとエルメスのコラボという、贅沢な夢を見せてくれた前澤氏。一緒に宇宙に行く人を募集していたみたいに、一回でいいから、乗せてください!
 
古賀貴司=文


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