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いつかはスポーツ界への恩返しを

コロナ禍で人に会えない状況も、外村さんの素早い事業開始を後押しした。PC用の大きなモニターやウェブカメラを買い揃えると、引退から2カ月後の8月に起業。
現在は基本的にオンラインで、“しなやかメンタルクリエイター”としてパーソナルコーチングを行っている。

「今はまだ手が回りませんが、ゆくゆくはアスリート向けのコーチングもやりたいと思っています。コーチングだけでなく、スポーツやトランポリンがより発展していくために、いろいろなかたちで貢献できれば。いわばスポーツ界への恩返しですね」。
そう言いつつ、既にスポーツ関連ビジネスへ向けても動き出している。誰もがトランポリンで遊べる施設「トランポリンパーク」の運営もやりたいことのひとつなのだという。
「いろいろな施設へ遊びに行かせてもらっているのですが、トランポリンパークって本当に楽しいんですよ。トランポリンの楽しさをより多くの人に知ってもらうには、こういった施設の拡充が不可欠。コロナ禍でも客足は落ちていないようなので、タイミングを見て本腰を入れて検討したいと思っています」。
さらに、一般社団法人日本舞踊スポーツ科学協会や美活整体サロンのアンバサダーを務めるなど、精力的に活動する外村さん。これまでトランポリンへ全力投球してきたエネルギーを、引退後はビジネスにすべて注いでいるので、いわゆる「心にぽっかり穴が開いたような」状態とは無縁。寝る間もないほど忙しいのだそうだ。

2028年、ビジネスで世界の舞台に立つ

今年、東京五輪が開催されようがされまいが、その次のオリンピックが開催されるのは2024年。今、ユニフォームではなくビジネススーツに身を包む外村さんは、2024年に向けてどんな目標を設定しているのだろうか。

「この1、2年でコーチング事業をしっかり軌道に乗せて、2024年には仲間を増やしたいですね。というのも、オリンピックの開催年には、アスリートの引退者が続出するんです。僕はアスリートほどビジネスコーチに向いている人はいないと思っているので、元アスリートの優秀なコーチを集めて、チームを組んで活動していければ。
それから、トランポリンパークもオープンしていたいですね。2024年には国内に1店舗か2店舗、オリンピアン的にその次の節目は2028年なので、その頃には海外での展開も視野に入れたい。長年トランポリンをやっていたおかげで、世界中のトランポリン選手と繋がりがあるので、決して実現不可能な夢ではないと思っています」。
写真:本人提供
かつてアスリートとして世界の舞台で飛び跳ねていた外村さんは、また違ったかたちで世界に出ていく日を夢見ている。トランポリンで世界一になるよりは、ずっと簡単なことなのかもしれない。
外村哲也(そとむらてつや)●1984年、東京都生まれ。幼少期から体操に慣れ親しみ、6歳のときトランポリン競技に出会う。10歳で本格的にトランポリンに転向すると、2003年にはシニアの世界選手権に初出場。2005年の世界選手権では日本史上初の全種目メダル獲得、2007年には世界選手権初優勝を飾った。2008年の北京オリンピックに出場し、4位入賞。以降、2020年6月の現役引退まで、日本代表として第一線で活躍を続けた。現役引退後は、1対1のコーチングで人をサポートする「しなやかメンタルクリエイター」として活動をスタート。18年もの間、アスリートとして世界のトップクラスを維持してきた経験をスポーツ以外の世界にも応用してもらうべく、「しなやかなメンタル」を構築し、試練を乗り越え目標を達成するサポートをしている。
「37.5歳の人生スナップ」とは……
もうすぐ人生の折り返し地点、自分なりに踠いて生き抜いてきた。しかし、このままでいいのかと立ち止まりたくなることもある。この連載は、ユニークなライフスタイルを選んだ、男たちを描くルポルタージュ。鬱屈した思いを抱えているなら、彼らの生活・考えを覗いてみてほしい。生き方のヒントが見つかるはずだ。上に戻る
赤澤昂宥=写真 岸良ゆか=取材・文


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