UFOやUMAは知っていても「UAZ」を知らない人は多いだろう。
もちろん未確認の飛行物体や生物ではなく、しっかりと確認されていて、しかも最近一部の車好きの間で密かな人気を博しているロシアの自動車メーカーだ。
UAZと書いて「ワズ」と読む。
その誕生は第二次世界大戦中のソビエト時代。軍用車両の製造を目的に作られたメーカーで、国名がロシアになった今も新車を作っている。
ラインナップにはひと昔前の日本車風SUVやトラックもあるが、ディフェンダーチックな4WD車(UAZ HUNTER)や、レトロで可愛らしい上の写真のUAZ-2206もある。
もちろんこのUAZ-2206も立派な新車、2021年モデルだ。といってもこのスタイル、60年もの間ほぼ変わっていないというから驚きだ。
何しろ地下に永久凍土が広がり植物が育たないツンドラ地帯があって、マイナス50度を下回ることも当たり前のロシアの車だ。
どんな道、いや道じゃなくても移動しなきゃならないことが求められる。
だから軍用車由来のセンターデフ付きパートタイム式4WDを備え、障害物を乗り越えやすいように車高も高い。
万が一故障しても容易に修理できるようリーフリジットの足回りであるなど、簡単な構造なのが特徴。一方で心臓部の2.7Lガソリンエンジンは信頼性や環境性能が21世紀仕様にアップデートされている。
構造やエクステリアだけでなく、インテリアも超シンプル。
運転席まわりも2列目以降も、なんにもないどころか、あまりにもシンプル過ぎて、ガソリンの給油管(上の写真の白い管)が車内から見えるほど(笑)。
でも、そういったところのすべてがこの車の魅力であり愛おしさにほかならない。
今どきの、指で触れたら画面が切り替わる液晶タッチパネルだとか、音声だけで音楽が聴けるとか、アンビエントなライティングが選べるとか、もうそういうんじゃなく、「いろいろ不便なのは何とかするからさ、キミはただ走っててくれたら」と言える相棒が、UAZなのかもしれない。
だからこその人気だろうが、今から注文をしても納車まで1年ほど待たなくちゃならない。
そしてようやく納車された新車のUAZ-2206の塗装が少し剥がれていたとしても、誰もクレームを入れないのだそう。
キレイさや利便性じゃない車の魅力を現代に残し続ける、ほぼUMAと言っていいような“ワズ”。シーラカンスのように、変わらぬ姿のままずっと生き続けてほしい。
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