UFOやUMAは知っていても「UAZ」を知らない人は多いだろう。
もちろん未確認の飛行物体や生物ではなく、しっかりと確認されていて、しかも最近一部の車好きの間で密かな人気を博しているロシアの自動車メーカーだ。
「UAZ-2206」全長4363mm×全幅1940mm×全高2064mm。後席用ドアは助手席側にひとつだけ備わる。もちろんすべてスライドドアではなく、ヒンジ式。価格は390万5000円〜423万5000円。UAZと書いて「ワズ」と読む。
その誕生は第二次世界大戦中のソビエト時代。軍用車両の製造を目的に作られたメーカーで、国名がロシアになった今も新車を作っている。
ラインナップにはひと昔前の日本車風SUVやトラックもあるが、ディフェンダーチックな4WD車(UAZ HUNTER)や、レトロで可愛らしい上の写真のUAZ-2206もある。
もちろんこのUAZ-2206も立派な新車、2021年モデルだ。といってもこのスタイル、60年もの間ほぼ変わっていないというから驚きだ。
バックドアは観音開き。ステップが備わっているので、ここからも乗り込むことができる。 何しろ地下に永久凍土が広がり植物が育たないツンドラ地帯があって、マイナス50度を下回ることも当たり前のロシアの車だ。
どんな道、いや道じゃなくても移動しなきゃならないことが求められる。
潔いほどシンプルなインパネ。床から生えた5速MTのシフトレバーも2021年の新車とは思えない懐かしさだ。 だから軍用車由来のセンターデフ付きパートタイム式4WDを備え、障害物を乗り越えやすいように車高も高い。
万が一故障しても容易に修理できるようリーフリジットの足回りであるなど、簡単な構造なのが特徴。一方で心臓部の2.7Lガソリンエンジンは信頼性や環境性能が21世紀仕様にアップデートされている。
2列目に後ろ向きのシートを備える。奥のシート横にある四角い箱は後席用クーラーだ。寒極地帯もあるロシアでクーラーなんて不要な気もするが、日本では必須なので後付けしてくれているのか。 構造やエクステリアだけでなく、インテリアも超シンプル。
運転席まわりも2列目以降も、なんにもないどころか、あまりにもシンプル過ぎて、ガソリンの給油管(上の写真の白い管)が車内から見えるほど(笑)。
9名乗車可能だが、日本では陸運支局によっては後ろ向きの2列目をカウントせず、乗車定員を7名とすることもあるそう。2列目以降は取り外しが可能。 でも、そういったところのすべてがこの車の魅力であり愛おしさにほかならない。
今どきの、指で触れたら画面が切り替わる液晶タッチパネルだとか、音声だけで音楽が聴けるとか、アンビエントなライティングが選べるとか、もうそういうんじゃなく、「いろいろ不便なのは何とかするからさ、キミはただ走っててくれたら」と言える相棒が、UAZなのかもしれない。
2列目シートの横の窓下にある小さなリング。これを引っ張ると窓が枠ごと脱着し、ここから車外へと出られる。非常口といったところだ。
英語の「ya3」って読めるけれど、これがロシア語の「UAZ」。だからこその人気だろうが、今から注文をしても納車まで1年ほど待たなくちゃならない。
そしてようやく納車された新車のUAZ-2206の塗装が少し剥がれていたとしても、誰もクレームを入れないのだそう。
キレイさや利便性じゃない車の魅力を現代に残し続ける、ほぼUMAと言っていいような“ワズ”。シーラカンスのように、変わらぬ姿のままずっと生き続けてほしい。
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