OCEANS

SHARE

読書や研修はとても重要ではあるが

まとめると、若手が望む「成長」をサポートするのに重要なことは、第一に「難しい仕事のアサインと伴走」、次に「そこから得られた学びの整理の支援」ということです。
そしてようやく、それに劣後するものとして「読書や研修などの一般的な知識のインプット」が来るのです。
読書や研修はとても重要ですが、それらは最大公約数的な一般論であるため(だからこそ、未経験のケースに遭遇した場合などに必要なのですが)、若手が今経験していることに対してぴったりな内容かどうかはわかりません。
それよりも最も彼らが必要としているのは上に挙げたような「今、ここ」でのサポートなのです。

ビジネス書に指導を任せていませんか

それなのに、「成長したいのか。なら、いろいろ勉強したほうがいいよ。こんな本をみてみたら?」と、実際の仕事での学習のサポートはあまりしないくせに、やたらにビジネス書ばかり薦めるということをしていると、もしかすると「指導を放棄して、本に任せている?」と軽く思われてしまうかもしれません。
また、ビジネス書もいろいろで、普遍的な原理原則に近いようなことを書いているものから、「具体的にこうしたほうがいい」と指南するいわゆる「ノウハウ本」のようなものまであります。
気をつけなければならないのは後者です。具体的になればなるほど、その若手が携わっている仕事にぴったりくるかわからないからです。

どうせ薦めるのであれば普遍的な本を

もっと言えば、日々、仕事のアサインやその内省をサポートしていれば、具体的な仕事からの学びは十分なはずです。
中途半端な「ノウハウ本」などは必要ないかもしれません。それよりも、どうせ本を薦めるのであれば、日々の自分の指導ではなかなか言及できない、よりベーシックで普遍的な世の中の原理原則に触れたものが良いのではないかと思います。
いわゆる「古典」と呼ばれるような書物はたくさんありますし、哲学や心理学、統計学など、どんな分野にも応用できるような学問的な書物も良いでしょう。
このように、上司の皆さんは「自分でなければならない日々のサポート」に集中して、本を薦めるなら、なかなか日々はフォーカスできない普遍的なことを教えてもらえるものをと、役割分担をはっきりさせて、部下の成長をサポートしてみてはどうでしょうか。
 
連載「20代から好かれる上司・嫌われる上司」一覧へ
「20代から好かれる上司・嫌われる上司」とは……
組織と人事の専門家である曽和利光さんが、アラフォー世代の仕事の悩みについて、同世代だからこその“寄り添った指南”をしていく連載シリーズ。好評だった「職場の20代がわからない」の続編となる今回は、20代の等身大の意識を重視しつつ、職場で求められる成果を出させるために何が大切か、「好かれる上司=成果がでる上司」のマネジメントの極意をお伝えいたします。
上に戻る
組織論と行動科学から見た 人と組織のマネジメントバイアス
『組織論と行動科学から見た 人と組織のマネジメントバイアス』(ソシム)
曽和利光=文
株式会社 人材研究所(Talented People Laboratory Inc.)代表取締役社長
1995年 京都大学教育学部心理学科卒業後、株式会社リクルートに入社し人事部に配属。以後人事コンサルタント、人事部採用グループゼネラルマネジャーなどを経験。その後ライフネット生命保険株式会社、株式会社オープンハウスの人事部門責任者を経て、2011年に同社を設立。組織人事コンサルティング、採用アウトソーシング、人材紹介・ヘッドハンティング、組織開発など、採用を中核に企業全体の組織運営におけるコンサルティング業務を行っている。
 
石井あかね=イラスト


SHARE

次の記事を読み込んでいます。