意外だったのは野菜全般が嫌いだったという点。
「とくにダメなのがトマト。無理に食べるとえずくんです(笑)。でも、短大時代に居酒屋さんで食べてみたら平気でびっくりしました。友達がサラダを取り分けてくれて、『嫌い』って言えへんからチャレンジしてみたんです」。
とはいえ、食べ物で苦労をしてきたのは事実。波瑠子さん短大に進学して栄養士を目指すことにした。偏食や食物アレルギーを持つ園児たちの役に立てればと。
卒業後は、府内の保育園に就職。「嫌いな食材があったら、別の食材で栄養を補えばいい」という持論のもと、栄養士として腕を振るった。
トマト嫌いを克服したのちは、トマトに対してむしろ好感を抱くようになる。
そして、燻製に目覚めたのは5年ほど前。友達がプレゼントしてくれた燻製キットを実家の庭に出して調理に励んでいた。
「サバ、たまご、ウインナー、ちくわ。いろいろと試しました。ちくわの燻製、美味しいですよ。味付けをしなくていいので、買ってきてすぐ燻製器に入れられます」。
こうして燻製にハマった波瑠子さんは、本格的に技術を習おうと思い、京都の燻製専門店で働き始める。そこで、ここの店主と運命的な出会いを果たした。
森川さんは数々の作品に出演してきた声優。10年ほど前から趣味で燻製を作っていたが、燻製専門店を出したいという思いが高じ、現在は二足の草鞋を履いている。
「スーパーで売っている食材はほぼ燻製にしました。でも、9割が失敗ですね。僕がやりたいのは燻製の可能性を追求すること。役者と同じで燻製はあくまでも主役の食材を引き立てる存在なんです。燻製と食材のバランスが上手く取れたときに最高の一品が仕上がります」。
森川さんは自分の店を出すにあたって、一緒に働いていた波瑠子さんを誘った。
「努力家だし、物怖じしない。もちろん燻製への情熱もある。レシピも一緒に考えるし、ランチタイムは完全に任せています」。
ちなみに、森川さんは楽天の「お買いものパンダ」が大好きで、公式クイズ大会「クイズパンダショック」で全国2位に輝いた。
さて、ほろ酔い気分で締めのお酒をいただきましょう。「ひがこ・むさこ日本酒飲み比べセット」が目に止まった。ここ東小金井とお隣の武蔵小金井のコンビだ。これに、森川さんが厳選した甘口の「酒未来」を加えて980円。
森川さんが言う。
「いろんな食材を試しているんですが、今試作しているのはマグロの燻製。例えば、チャーハンでお肉の代わりに使うとかも面白い。間に合えば4月中旬から出します」。
波瑠子さんもゆくゆくは独立するつもりだ。自分の店は京都で出したいという。
売れ筋はたまご、チーズ、燻製のマヨネーズなど。たらこ、ベーコン、マヨネーズを買って帰りました。
では、最後に読者へのメッセージをお願いします。
【取材協力】燻薫~Kunkun~住所:東京都小金井市東町4-37-23電話番号:042-316-5539https://kunsei-kunkun.com「看板娘という名の愉悦」Vol.146好きな酒を置いている。食事がことごとく美味しい。雰囲気が良くて落ち着く。行きつけの飲み屋を決める理由はさまざま。しかし、なかには店で働く「看板娘」目当てに通い詰めるパターンもある。もともと、当連載は酒を通して人を探求するドキュメンタリー。店主のセンスも色濃く反映される「看板娘」は、探求対象としてピッタリかもしれない。
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石原たきび=取材・文