フランス・パリで開催された国際自動車フェスティバルにおいて、「最も美しいスーパーカー2021」に選ばれたMC20。
「MC」とはマセラティ・コルセを意味し、つまりはレーシングカーであることを表している。
そんな一台の魅力を、識者6人に語ってもらった!
MASERATI MC20 マセラティ MC20エンジンは自社開発の3.0L V6ツインターボ。電動化が叫ばれるなか、車好きにとってはうれしい誤算だったようで、0→100km/h加速は2.9秒、最高速度は325km/hと、数字的にも是非とも乗ってみたいと思わせる。マセラティ初となる独自のバタフライドアにも注目。全長4669×全幅2178×全高1224mm 2650万円〜。
マセラティにはブルネロ クチネリ
マセラティ グラントゥーリズモに乗り始めて6年になります。昔からお世話になっている人に譲ってもらったもので、初めて購入した自分の車です。
僕はテレビ番組「ファッション通信」のプロデューサーをしている関係で、コロナ禍の前はピッティ・ウオモやミラノ・コレクションを年2〜4回のペースで取材し、一年の1カ月ほどをイタリアで過ごす生活を続けてきました。
だからイタリアのファッションや食は大好きなのですが、車にはあまり縁がなかった。ずっと東京の中心部に住んでいることもあり、移動は電車かタクシーで十分で、車が必要なときは実家のグロリアやフーガを使えば事足りたんです。でも、グラントゥーリズモに乗るようになって、改めて車がある生活の楽しさを実感。マセラティの魅力にもどっぷりとハマりました。
フェラーリ製のエンジンの気持ち良さは言わずもがな。白の外装とクリームの内装のコンビネーションも上品で飽きがこない。近所への買い物や日常の足として普通に乗っています。4人が無理なく乗れるので、友達夫妻と箱根の温泉旅館までドライブ、なんてシチュエーションにもハマります。
MC20の印象は、スーパーカーなのにこれ見よがしなところがなく、品良くまとまっているということ。自分が乗るならグラントゥーリズモと同じ白で、ブルネロ クチネリのスウェット風のカシミヤのセットアップを着て、カジュアルに乗りこなしたいですね。
| 「インファス・ドットコム」映像制作部 事業部長/統括プロデューサー 神保 誠 ファッション専門のTV番組「ファッション通信」のジェネラルプロデューサー。文化服装学院で特別講師も務める。マセラティをさらりと乗りこなすファッショニスタ。 |
初出にして、磨きに磨かれた佇まい
マセラティ・コルセ(イタリア語でレーシングの意)2020を略してMC20。同社にとっては04年に発売されたMC12以来となるミッドシップ2シーターピュアスポーツです。
MC12はレース参戦の背景もあり、空力性能を優先させるべく5m超の全長を持つ規格外的なモデルで、販売台数も50台程度に限られました。が、MC20は今のところ通年販売される見通しで、サイズはフェラーリやマクラーレンなどのV8スーパーカー勢とガチンコに。でもMC20はエンジンがV6と聞けば格落ち感否めず、と思われるかもしれません。
しかしながら、久しぶりにマセラティが全面開発・生産するというこのエンジンは、現在のF1を牽引するプレチャンバー燃焼の採用を筆頭に、他社では実現していない最新技術がてんこ盛り。恐らくはライバルのV8ユニットより軽いであろう、それを武器に同等の動力性能を誇ります。
しかもこれほどのエンジンを開発していながら、MC20は後に3モーターEV化の道筋もつけているといいます。実現の暁には、左右の駆動輪を自在に制御しながら、異次元のコーナリングパフォーマンスを見せてくれることになるかもしれません。
と、かようにバキバキの最先端を走るスーパーカーでありながら、その佇まいは徹底的にスマートで、ディテールにもメカっぽさや子供っぽさを剥き出したような痕跡は見当たりません。初出にして磨きに磨かれたその佇まいに、マセラティの美意識を感じますね。
| 自動車ライター 渡辺敏史 出版社で自動車/バイク雑誌の編集に携わったあと、独立。自動車誌での執筆量が非常に多いジャーナリストのひとり。車の評価基準は、市井の人の暮らしにとって、いいものかどうか。 |
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