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由夏さんが高校卒業後の進学先に選んだのは産業能率大学。
「他にも候補はありましたが、オープンキャンパスで『うちはみっちりと勉強ができて楽しいですよ』という一言が刺さりました。大学の4年間で成長して起業しようと思っていたので」。
上京後は美容師のお姉さんとふたり暮らしを始める。
「前はケンカが絶えませんでしたが、今は仲がいいです。あ、この髪型もお姉ちゃんにやってもらいました(笑)」。
先日のお姉さんの誕生日祝いで撮った写真も見せてくれた。
チーズケーキをひと口かじった後でパシャリ。
大学ではマーケティングを専攻している。
「マーケティングの思考の基本は、物事の現状を見て、課題を抽出して、課題と理想のギャップを埋めること。これを押さえておけば、どんな仕事にも活かせると思います」。
大学に入って最初に読んだのはマーケティングの大家、コトラーの理論を解説した本。さらに、星野リゾート社長・星野佳路さんを特集した『カンブリア宮殿』を見て、初めて経営者を格好良いと思ったそうだ。
みっちりと勉強しています。
そうそう、「浮雲」という店名の由来が気になっていたのだ。厨房で忙しく動き回る店主・有川 毅さん(36歳)の手が空いた隙に聞いてみた。やはり、二葉亭四迷の『浮雲』からですか?
「それもありますが、いちばんは僕はいろんなジャンルの料理をやってきたので、ジャンルレスな浮雲のようなお店にしたいという思いからです」。
なるほど。由夏さんはいかがでしょう。
「明るい、真面目、器用、頭がいい、仕事ができる、物覚えが早い、効率もいい。たくさんありますね(笑)」。
就活の相談にも乗ってくれるという有川さん。
ここで、ふと壁に目をやると何やらお礼状のようなものが。
「お弁当ありがとうございました」とある。
「あ、それは最初の緊急事態宣言のとき、世の中が暗かったでしょう。僕らも売上が9割減とかになって、やりがいあることをしたいなと。各地の訪問介護ステーションを紹介してもらって、お弁当を無償でお渡したんです」。
時期が時期だけに提供先探しは難航したが、ツテをたどってようやく見つけたそうだ。
ここで、もうひとりのアルバイト、レンさんが登場。由夏さんの顔がパッと華やぐ。「めっちゃ仲いいんですよ」とのこと。
「左利きだから左がいい」とレンさん。
というわけで、名店のお酒、料理、そして看板娘の話を堪能した。就活がんばってください。
浮雲ステッカーを購入してお会計。
最後に読者へのメッセージをお願いしますね。
そうか、「う巻かない」は浮雲をイメージしているのかもしれない。
 
【取材協力】
酒場 浮雲
住所:東京都目黒区鷹番2-20-8 モンテローザビル2F
電話番号:03-6882-1529
https://ukigumo.gorp.jp
www.instagram.com/ukigumo_gakudai/
「看板娘という名の愉悦」Vol.144
好きな酒を置いている。食事がことごとく美味しい。雰囲気が良くて落ち着く。行きつけの飲み屋を決める理由はさまざま。しかし、なかには店で働く「看板娘」目当てに通い詰めるパターンもある。もともと、当連載は酒を通して人を探求するドキュメンタリー。店主のセンスも色濃く反映される「看板娘」は、探求対象としてピッタリかもしれない。
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石原たきび=取材・文


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