自然豊かな観光地のイメージが強い埼玉県・秩父。
だがここ数年は、“酒どころ”として盛り上がりを見せているらしい。
実は秩父は、日本酒をはじめ、焼酎、ワイン、ウイスキー、ビールなどさまざまな酒が造られている全国でも有数の土地。そのポテンシャルの高さで、飲兵衛たちを秩父に惹きつけていたワケだ。
今すぐ出かけるのは難しくとも、近い将来、必ず飲み歩きが楽しめる日は訪れる。そんな来るべき日に備えて、酒の街、秩父の魅力をキーマン3人の証言から予習しておこう。
ウイスキー樽で仕込んだ“あの酒”が存在する
秩父の酒を語るうえで、まず忘れちゃならないのがウイスキーだ。というのも、秩父には世界に誇るウイスキーブランド、イチローズモルトの蒸留所があるから。
彼らのウイスキーは2017年から世界で最も権威のある品評会「ワールド・ウイスキー・アワード」で最高賞を4年連続受賞していて、海外にも多くのファンを持つ。
と、これは酒好きにとっての一般常識。ここからが、本題だ。
秩父には、ウイスキーの産地ならではの珍しいワインが存在する。
もしも普通のワインと思って飲んだら、驚愕するに違いない。ひと口含んだ瞬間に、ウイスキーのようなピートの香りが鼻に抜けていく。イチローズモルトのウイスキー樽で熟成させることで、ワインにウイスキーの香りを移しているのだ。
ワインの生みの親である兎田ワイナリーの代表・深田和彦さんは、こう話す。
「海外では、大手ワイナリーでこうしたワインは製造されていて、最近注目を集める熟成方法でもあります。ただ、ウイスキー熟成後の樽を手に入れるのはとても大変で、日本でもなかなか手に入らない。近くにイチローズモルトの蒸留所があるこの土地だからこそ、完成したワインといえますね」。
秩父の酒の作り手たちが手を取り合うことで、新たな旨い酒が生まれる。それも、多様な酒を造る酒どころとしての魅力といえるだろう。
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