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10年後まで、キャトルに乗り続ける

幸か不幸か、その頃は小林さんも仕事が忙しく、またキャトル+ノートの2台体制にするための、家の前の駐車スペース改修もまだ終わっていなかった。

自宅前の倉庫をつぶして、ノートを置けるように改修。ゲートは下に倒せ、キャトルを収めたら引き上げるタイプ。


結局、駐車スペースの改修が終わったのとキャトルの納車はほぼ同時期の1月中旬。ちょうどこの取材の約一週間前だ。

「まだ乗って一週間だから、感想というほどのものはないけれど、キャブよりまずはマニュアルシフトに慣れたいですね。操っていると面白いけれど、渋滞中の坂道発進とか、結構大変です」。



初めてのキャブレター仕様の車。素人には優しいかもしれないが、それでも30年以上も前の車だ。

販売店のオヤジさんには「気温が30度を超えたら乗らないほうがいいよ」と言われていて、たまに仕事でノートに乗ると「涙が出るほど快適に感じます(笑)」。

アメカジにも造詣が深い小林さんだが、アメ車にはいかなかった。「小さいのが欲しかったんです。今の家も、藤沢の家も周囲の道はとても狭いので」。


それでもキャトルは3年以上、いや電気自動車時代が来るまで乗り続けるという。

そんな時代が噂される2030年代とは今から10年後の世界。こうしたキャブレター仕様の車は走行を禁止されるかもしれないし、キャトルも10年後まで現役でいられるかわからない。「ガソリンスタンドもかなり減っているんでしょうねぇ」と小林さんは言う。

幌は前のオーナーが交換済みで、とても生地がしっかりしている。


また、最後の10年間だからこそ、キャトルで味わいのあるカーライフにしたいとも。

「買うときに妻から『ちょっと冷静になったら?』なんて言われましたが、『ガソリン車に乗れる最後のチャンスなんだ。オレの夢を遂げさせてくれ』と説得した車です」。

10年後、もしも中身を電気自動車にして古い車に乗れるなら、シトロエンのアミが欲しいという。


これから10年、キャトルとどんな毎日が待っているのだろうか。「まずは春になったら、ルーフのキャンバストップを開けて走りたいですね」。

キャトルと過ごす、小林さんの“車をじっくり味わう”ステージが、いま始まったのだ。



鳥居健次郎=写真 籠島康弘=取材・文

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