数多くのセレクトショップや古着店などが軒を連ねる渋谷区神宮前の洋服お直し工房、フェニーチェ クローゼット。
初来店だという渡辺真史さんが、店長の関 杏輔さんに話を伺った。
渡辺 はじめまして、ですね。フェニーチェ(不死鳥)という名前のとおり、服を生まれ変わらせる面白い店だと伺っています。
関 もともとショップからの依頼でスーツをおもに直していましたが、3年前に店名を変えて“街の仕立屋”としての性格が強くなりました。スーツはもちろん、デニムなどのカジュアルアイテムまで、お客さまのご要望どおりにリボーンします。
渡辺 リサイズやリシェイプはスーツの世界では当然の考え方だけど、カジュアルシーンでは新しいですね。いわゆるカジュアルの既製服って、サイズ展開はあるにせよ最大公約数を狙って作るものですから。
関 ですね。共感してくださる方は、ハマっちゃうみたいで。
渡辺 すごくありがたいサービスですよね。ベストサイズに変われば、シルエットにもつながるし、ちょっとした違いで時代感や気分が表現できる。
関 まさにそうです。渡辺さんの作る「トリップスター」や「ジェシー」が好例だと思うんです(注・ベドウィン & ザ ハートブレイカーズとディッキーズとのコラボレートアイテム)。
渡辺 ありがとうございます(笑)。しかも、スーツにはルールがあるけれどカジュアルにはないし、多少あっても無視する面白さがある。
関 そうなんです。だからこそ難しいし、楽しい。技術的なこと以外に、お客さまとのカウンセリングの時間を設けて“好み”を知ることがこの仕事の醍醐味であり、ポイントかなと。
渡辺 そうやって生まれ変わった服は、本当に特別ですね。自分だけのオンリーワンであり、サステイナブルでもある。
関 他人には伝わりにくいかもしれませんが、結局何事もこだわりを持つことが大切です。こだわるぶんだけ見える世界が大きく変わります。
渡辺 どんなお客さんが多いですか?
関 10代の方からお年寄りまで。スタイリストさんなどもお見えになり、雑誌撮影用に衣装を直すこともありますね。実はオーシャンズさんの撮影でもお世話になっています。
渡辺 なんと。次はぜひ、僕の服もお願いしたいな!
——ファッションの激戦区に潜む、こだわりのサロン。そこでは今日も、“新しい服”が産声を上げている。若木信吾=写真 増山直樹=文