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2021.02.10

ライフ

歌舞伎町ホスト、アパレル会社の起業と倒産を経た男がアートで注目を集めるまで


「37.5歳の人生スナップ」とは……
広いアトリエには所狭しと作品が並ぶ。完成品も制作中のものもある。黒人の少年少女を描いたポートレートや立体作品の一部に使われているのは、まぎれもない廃棄物だ。家電製品のパーツや電子機器の基盤、磁気テープなどの“ゴミ”である。
このアトリエの持ち主は、美術家の長坂真護さん。「サステイナブル・キャピタリズム」というコンセプトを掲げ、先進国がガーナに投棄したゴミを使ってアート作品を作っている。
彼の作品はアートコレクターたちの注目を集めており、高値がつく。納品のため木箱に梱包されようとしていた150cm×150cmほどの大型作品は、コレクターが2200万円で購入したものだ。
©HIDEYO FUKUDA
「僕自身は売り上げの5%しか受け取りません。あとは、活動費用。2030年までにガーナのスラム街にリサイクル工場を作るという目標があるんですよ。でも僕がやっているのはただのボランティアや慈善事業じゃない」。
長坂さんが作品を作って売ればゴミは減る。しかも資本主義のしわ寄せや貧困を象徴するガーナのゴミがアートとなって資本主義市場で価値を生み、そのお金がガーナに還元される。
アート活動と経済活動、そして社会課題の解決も同時に行う。これが長坂さんの言う「サステイナブル・キャピタリズム」だ。
今年37歳になる長坂さんがこの考え方にたどり着いたのは4年ほど前。2017年に初めてガーナを訪れ、スラムをテーマにした作品を作るようになってすぐの頃だ。それまでは、まったく異なる作風の作品を描いていた、住所不定の路上の絵描きだった。
「本当にダメなやつだったと思います。何もかも中途半端で、いろんな人の応援をダメにしてしまう、ろくでなしでした」。


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