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モノを選ぶ視点は、使い手に寄り添うデザイン

チャンディーガルで見つかったジャンヌレの1950年代のコートハンガー。「どういった場所で使われていたものかはわからないのですが、玄関を入ってすぐの場所にこの存在感は目を惹きます。濃いめのチーク材が白壁と合わせることで美しいコントラストに」。(溝口さん)
藤井 溝口さんは文化人だよね。“これを残したい”と、大切に思って仕事をしている人だと思う。
溝口 僕は仕事をするうえで、お金を稼ぐということも大切ではあるんですが、生活を豊かにしたいというより、お金でデザイン史に投資したいんです。
藤井 デザイン史に投資? すごいですね。そんな溝口さんが日用品でどんなものを使っているのか興味あります。
溝口 え? なんだろう。
藤井 好きな家電とかね。
溝口 家電は機能重視です(笑)。
藤井 服や靴は?
溝口 靴はニューバランスしか履いていません。年齢を重ねて、いちばん歩きやすいものを選ぶようになって。
藤井 服はどこのものが好き?
溝口 ソフの機能性を重視した服が好きです。昔の備長炭を使ったシリーズなどはとても影響を受けましたね。ノンネイティブも好きで買っていますよ。
藤井 3年に1度くらい?
溝口 いやいや、もっと多いですよ。広島にもショップがあるので。
藤井 ありがとう(笑)。インテリアではどういうものが好き?
溝口 普遍的なものですね。特に柳宗理が好きです。あと、新潟県燕市という金物の街があるんですが、そこのカトラリーが美しいんです。建築ではル・コルビュジエの弟子、坂倉準三に感銘を受けました。
[左]ル・コルビュジエ●1887年、スイス生まれ。言わずと知れた、モダニズム建築の巨匠。前川國男、坂倉準三らを筆頭に、彼の下で建築を学んだ日本人も多い。また国立西洋美術館は国内唯一のコルビュジエ建築だ。ⒸGetty Images [右]坂倉準三●1901年、岐阜県生まれ。大学在学中に建築を志すようになり、’29年渡仏。ル・コルビュジエに師事し、都市計画や住宅設計に携わる。同僚だったシャルロット・ペリアンに大きな影響を受けた。坂倉建築研究所=写真協力
藤井 坂倉さんの建物のなかでも特別なものってあるんですか?
溝口 大阪府立総合青少年野外活動センターです。10年前から使用されていませんが、大変重要な作品です。
藤井 見たいです!
溝口 この建物はコルビュジエを最も表現していて。彼は首相の家も設計していますが、政治に決して寄らないというか。時代に迎合しない姿勢が好きです。
坂倉の出身である岐阜県羽島市の役所も手掛けているんですが、いくつかの市が合併した場所だったので、どの方向にエントランスを設けるかが問題で。でも、坂倉はどこからでも入れるようにして裏側をつくらなかった。だから、どこに住む市民も気持ち良く使えたんです。
藤井 作り手のエゴが入っていない。
溝口 建築もインテリアも自分だけのものではないですからね。
藤井 何か買うにしても、そういう視点を大切にしたいです。
 
溝口至亮(ギャラリー サイン)=写真 仁田ときこ=文


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