職人技が随所に光る孤高の超高級車
ベントレー ミュルザンヌ2020年に生産が終了したベントレーのミュルザンヌ。かつての親会社ロールス・ロイスとも、現在の親会社であるフォルクスワーゲンともプラットホームをシェアしていない、数少ないベントレー独自開発モデルだった。
日本ではミュルザンヌとミュルザンヌ スピードが販売されていた。
搭載されていたエンジンの基本設計はロールス・ロイス傘下時代の1959年に開発されたL410(エンジンのボアサイズが4.1インチであることを示す)にまで遡る。
これを現代の性能にアップデートしたエンジンの最高出力は500psオーバー、0-100km/h加速は5秒台だった(ミュルザンヌ スピードは4.9秒)。そんなエンジンを職人の手で30時間かけて組み立てていた。
つなぎ目のないCピラーとリアフェンダーもまた、ベントレーの自慢であった。通常の金型プレスではなく、わざわざ職人が溶接し、シームレスに美しく仕上げていたからだ
カタログでは114種類の外装色、21のカーペット色、9のウッドトリム、24の内装革が選択できる、と謳われていたが、技術が許す限り、どのようなオーダーにも応えようとするのがベントレー。リアシート用のサンルーフや、車の周囲の会話を聞くためのマイクが欲しいといった要望にも応えた、と言われている。
効率とは対極の職人による技芸にこだわった車。この“ベントレー職人”たちによる超絶技巧を、人生で一度は味わってみたいものだ
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