OCEANS

SHARE

しっかり受け継いでいたポルシェらしさ

嵐山高雄パークウェイを登っても、最大1050N・mというバケモノのようなトルクで、音もなく、何の苦労もなく山道を駆け上がる。
後部座席は、身長182cmの編集部員が座っても余裕の膝元。
エンジン音が高鳴れば、それなりに車を頑張らせているのだなと思えるのだが、音がしないものだから、途中から山道を“登っている”という感覚すら希薄になる。
コーナリング中にボディの横方向への傾きを打ち消してくれるPDCCをはじめ、ポルシェの最新電子デバイスによって、ステアリング操作に一瞬たりとも遅れることなく、アクセルの踏み込み加減にも律儀に応えながら、安全にワインディングを駆け抜ける。
絶大な信頼感を与えてくれるブレーキもあるので、ついアクセルを踏み込んで、その先の世界を見たくなる。そのうちにどんなブレーキングがいいのか、どうコース取りをすれば……など、いつの間にか運転がもっと上手くなりたいと思うようになる。

途中、コンビニにも寄った。一応、リフトアップ機能があるので、ポチッと押して車高を少し上げて、ボディの腹を擦らないように。日常使いできるスポーツカー。これもまたポルシェの魅力のひとつだと思うが、その辺も「タイカン」は受け継いでいる。
伝統の水平対向エンジンを搭載するポルシェ「911」とは、何もかも違うようで、音以外は何もかも同じ。御所や二条城、名刹は当時の面影をしっかり残している京都も、整備された当時と今とでは景色が異なるように、「911」のようなのだがまったく新しい乗りものだとわかる「タイカン」。
日本でも2030年代にすべての車をハイブリッドか電気自動車か、燃料電池車といった「電動車」にしようという検討が始まった。

そんな先の話ではなく、あと10年ほどで、電気自動車が当たり前になりそうだ。そう言うと「水平対向エンジンが〜」と嘆く人がいるかも知れないが、心配ない。
電気自動車でも、ポルシェは恐ろしく楽しいのだ。
 
籠島康弘=取材・文


SHARE

次の記事を読み込んでいます。