「失敗しないキャンプデビュー、基本の“キ”」とは…… 揃えるべきコスパギアもわかったし、「あとはキャンプ場へ行くだけ!」と意気込んでいるそこのあなた、ちょい待ち!
道具を揃えるより大切なことがある。それは、キャンプのマナーとモラル、そして注意点を事前に把握しておくこと。空前のキャンプブームにも功罪があるようで、最近ではモラルの低下も散見されるらしい。
そこで、今回も年間100回のキャンプをこなし、ドラマ『ひとりキャンプで食って寝る』(テレビ東京)を監修したスタイリストの平健一さんに、キャンプ入門者が常識として頭に叩き込んでおくべき“基本のキ”を伝授していただいた。
どれも当たり前だけど、意外に守れていない人多数。あなたは大丈夫?
①そこ、私有地じゃない?
「キャンプはキャンプ場でやれ!」
入門者でも玄人でも、キャンプは「キャンプ場」と明確化されている場所で行わなければならない。しかし、これも守られないケースが多発しているらしい。
「人気(ひとけ)のない静かな場所での野営に憧れる気持ちはわかります。でも、そこが私有地ではないと確認は取れていますか? 私有地の場合、間違いなく罪に問われてしまいます」(平さん。以下、カッコ内すべて)。
仮に私有地ではない場合でも、キャンプ場以外の土地に許可なくテントを張った場合、不法占拠と見なされる場合もあるという。
いくら目の前に開放的な自然が広がっていてとしても、「こんな広い場所ならテント張ってOKでしょ!」……なんて甘い考えは通用しないのだ。
②ポイ捨て、最悪です。
「自分のゴミは自分で持ち帰れ!」
平さんは「キャンプ場に来たときよりもキャンプ場を綺麗にして帰る」ことを心がけているという。
悲しい話ではあるが、キャンプブーム以降、ゴミを放置して帰るキャンプビギナーも増えているという報告は少なくない。
キャンプ場で出したゴミは、持ち帰るのが基本。ただし、キャンプ場によってルールは異なり、完全持ち帰りのところもあれば、分別の義務さえ守れば処理してくれる場所もある。
ゴミ袋はいろいろと応用が利くので多めに準備しておくこと。また、出発前に利用するキャンプ場のゴミのルールを確認しておこう。
③大自然にも“ご近所さん”はいます。
「その音楽や大声、大迷惑!」
キャンプ場は、私有地でもなければ、フェス会場でもない。
キャンプ場には、クワイエットタイム(=就寝時間)が設定されている。スピーカーの音を絞るのは当たり前だし、ロケーションによって音楽がNGだったり、22時以降は私語厳禁の場所も存在する。
「遅い時間に車のエンジンをかけたり、激しく物の出し入れをすることも“音”が発生するので、片付けや就寝準備はクワイエットタイム前に済ませましょう。また、ご近所さんとは極力、テントやベースの距離を離すことも大切な配慮のひとつです」。
楽しくなると盲点になりがちなポイントだけに「キャンプ中は音に注意」を復唱すべし。小声でね。
④川や湖を甘く見るのは命取り。
「自然をナメると死ぬと心得よ!」
毎年、ニュースになる水害事故は、キャンプ場でも後を絶たない。
夏場のキャンプは水遊びも醍醐味のひとつ。でも、川は水泳のプロ選手でも流されるというし、湖は水流が穏やかだから気を抜いてしまいがちだが、飲み込まれたらパニックに陥るほどの深さがある。
「水辺では絶対に安心してはいけません。カヌーでもサップでも、水遊びをするなら必ずライフジャケットを着用しましょう」。
もちろん、飲酒をしての水遊びなどもってのほか。水で遊ぶなら、くれぐれもお酒は飲まないように。気を大きくして無茶な飛び込みなんてのもご法度だ。自然をナメると命の保証はないゾ!
⑤冬キャンプは特に注意!
「一酸化炭素中毒に気を付けろ!」
キャンプギアには、燃やすことで一酸化炭素を排出するものがある。具体的にはガスランタンや練炭などがそれにあたる。
「くれぐれもテント内でガス器具を使用したり、練炭を焚いたりしないでください。それはいくら外が寒くてもです」。
“練炭自殺”という言葉を耳にしたことがあると思うが、テント内でランタンや練炭を使うというのは、まさにそれと同じ要領なのだ。
「換気をしていればいいと思うかもしれませんが、ご法度。山岳隊が使うようなテントならまだしも、我々の使っているテントでは換気の機能がまるで異なります。なので、“テント内でのガス・練炭使用は禁止”と覚えておいてください。本当に命をキケンに晒してしまいます」。
ほかにも注意点や工夫はいろいろ!
上記の5項目は、あくまで基礎中の基礎知識。ほかにも知っておくべき知識はたくさんある。例えば……
▼火事防止のために、芝生のうえで焚き火をしない。する場合には必ず、足元に難燃シートを敷く。
▼火傷防止のために、熱いものを触る際にはグローブを着用する。
▼蜂が寄ってこないように「黒」「黄色」「香水」は極力避ける。
▼火を使う際には“難燃素材”の服を着用する。
▼料理はゴミと時間の削減のために、焼く・煮る・炒める手前まで自宅で準備を。食材はジップロックなどに入れ、ハードタイプのクーラーボックスで持ち運び&保管する。
▼服装は過度な装備がちょうどいい。冬場の防寒はインナーから。コットンは汗でカラダを冷やし、化学繊維は熱を逃さないものもあるため、素材はメリノウールがオススメ。
いろいろと学ぶべきことは多いが、大前提として、「地球から“自然を借りている”という謙虚な気持ちが大切」と平さんは言う。
どうしてもギアに意識が行きがちだけど、キャンプの基礎知識や会場のルールなどをしっかり頭に入れ、キャンプ中は常に節度のある行動を。安心&安全を心がけ、ハッピーなキャンプを楽しもう!
「失敗しないキャンプデビュー、基本の“キ”」とは……空前のキャンプブーム。“今日から俺も!”と思いつつ、どこから準備すれば良いのやら。そんなビギナーでもきっと失敗しない、基本の“キ”をプロが伝授。
上に戻る 市川明治=取材・文