切っても切り離せないミリタリーとの関係
ジープには本物の響きがある。本物とはつまり、圧倒的オリジナリティとタフネスだ。誰もが「4輪駆動車ってこうだよね」と、直感的に納得してしまうのである。日本市場でコミュニケーションを担当する新海宏樹氏は、その理由をこんなふうに分析してくれた。
「もともと軍用車であったことが大きいと思います。たとえ車輪がひとつ外れても動いてくれる。工夫すればボンネットに荷物も積める。“どこへでも行ける。何でもできる”と評された初代『ウィリス』のDNAが、今も息づいているからではないでしょうか」。
1941〜’45年まで生産された「ウィリス」の逸話は、本国アメリカにおいては伝説的だ。
長距離パトロールから除雪作業までこなし、消防ポンプ車や戦場救急車としても活躍。第二次世界大戦でヨーロッパ戦線を率いたのちの米大統領アイゼンハワーは、「ジープがなければ勝てなかった」と残している。
「この汎用性の高さが、実はジープという名前の由来だという説があるんです。ジェネラル・パーパス・ビークル──日本語で言えば汎用偵察車──の頭文字のGとPをつなげて、“ジーピー”と呼んでいた。それが転訛してジープになったといわれています」。
そして戦後、一般向けモデルの開発を試みたジープはある傑作を世に送り出す。それが’54年発表の「CJ-5」だ。
「モデル名のCはシビリアン、つまり一般市民を表しています。軍用ではない初のジープ。高い人気を誇る現行のラングラーに直結するデザインといえます」。
丸みのあるボディを採用し、快適さと高い走破性を両立。この「CJ-5」の生産期間は実に30年にわたり、世界150カ国以上で販売されることになる。
ミリタリーを出自として、のちに世界中のオフローダーファンを魅了するジープの歴史は、このモデルによって第2幕が上がったといえる。
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