Day 31 HOL.
心底聞きたかった「おかえりなさい」。腕をつかむその手の温もりにジンとした
早々にホテルをチェックアウトし、見慣れた我が家へと向かう。勝負服のヘアカーフのブルゾンにグレーのハイゲージニット、白いナイロンパンツという軽快な着こなしとは裏腹に、ユースケの足取りは重かった。
それは家族に会いたいという期待が膨らむ半面、既に居場所がなくなっているかもしれないという不安からだ。最寄り駅から住宅街へ続く坂道をわざとゆっくりと上っていく。自宅前に着いたが、ひっそりとしていた。
『本当にオレは歓迎されているのだろうか……。娘のセーターだけ玄関のドアに掛けて、また旅に出ようか』。それにどんな顔をして戻ればいいかがわからない。いきなりドアを開けて家に入っていくのもためらわれるし、かといってインターホンを押すのもおかしい。
家の前を行ったり来たりしていたそのとき、ガチャリと玄関ドアが突然開いた。ユースケは狼狽し、坂道を急ぎ足で下り始めた。すると、誰かに突然腕をつかまれた。振り返るとメグムだった。
「パパ! どこへ行くの!?」「え、いや……偶然通りかかったんだよ」「そんなわけないでしょ! おかえり。みんな待ってるから、もう家に入ろうよ」「そうか。わかった、わかった」。
うれしいような、恥ずかしいような、何ともいえない表情で敷居をまたいだ。
着回しアイテム【5】「ベルルッティ」のブルゾン最高級ヘアカーフが贅沢に使われた、フライトジャケット風のレザーブルゾン。独自の色付け技法・パティーヌによるスポット柄がモダンなスパイスに。裏地はカリグラフィの総柄プリント入り。104万5000円/ベルルッティ 0120-203-718
【11】「ジョン スメドレー」のニット最高級メリノウールが使われたVネックニットは大人のマストアイテム。程良くゆとりのあるスタンダードフィットもポイントだ。3万2000円/ジョン スメドレー(リーミルズ エージェンシー 03-5784-1238)
【16】「エイトン」のパンツ米軍のスノーパンツをベースにシルエットを今風にアレンジ。高密度ナイロンは天然繊維のような肌触りと表面のシボ感が持ち味だ。3万3000円/エイトン(エイトン 青山 03-6427-6335)
西崎博哉(MOUSTACHE)=写真(人物) 高橋絵里奈=写真(静物) 武内雅英=スタイリング 古川 純=ヘアメイク 押条良太(押条事務所)=文 大関祐詞=編集・文