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では良質な睡眠を得るには、どうしたらいいのでしょうか。
まず押さえるべきは、睡眠中に副交感神経を優位にすることです。副交感神経が優位ならウイルスを倒すリンパ球が血液中に増えますし、毛細血管へのルートも開くことでリンパ球が体のすみずみまで届くようになるからです。
また睡眠中は、健全な細胞を酸化させたり、毛細血管を傷つけて劣化させたりする活性酸素を、効率的に除去できるタイミングでもあります。活性酸素は、ストレス過多で交感神経優位が続きすぎたり睡眠不足だったりすると大量に発生する物質です。この活性酸素が体内に増えすぎると免疫機能が低下してしまうため、できるだけ留めておきたくありません。
ここで活躍するのが「睡眠ホルモン」とも呼ばれるメラトニンです。メラトニンは非常に強い抗酸化作用を持つため、睡眠中に活性酸素を除去し、毛細血管の劣化と体の酸化を防いでくれます。
同じ睡眠時間を確保しても、メラトニンがしっかり分泌された状態で眠るのと分泌されずに眠るのとでは、疲れの取れ方もウイルスを倒す力も圧倒的な差がつくと考えてください。メラトニンを活用し、リンパ球を増やす対策が必要です。

睡眠時間が短いほど免疫機能は落ちやすい?

世の中には、風邪を引きやすい人と引きにくい人がいます。免疫機能に影響するような薬を服用していたり持病があったりしたら、それが関係していそうですが、健康上の問題を指摘されていない働きざかりでも、しょっちゅう風邪を引いてしまう人がいます。この背景には、いったい何があるのでしょうか。
最近では「働き方改革」が叫ばれるようになり、リモートで労働時間をコントロールする人も増えました。しかし、いまも残業や長い通勤時間に苦しむ人は多いかもしれませんし、仕事でなくても、やりたいことがあると削られがちなのが睡眠です。
1日は24時間と決まっているので、どうしてもそうなってしまうのでしょう。しかし最も大切な資産である体が知らぬ間に消耗し衰えてしまうことを考えると、7時間は確保したいところです。
7時間というのは、世界中のさまざまな研究によって導き出された値です。私が勤務するブリガム・アンド・ウイメンズ病院で睡眠時間と寿命の関連性を調べたところ、睡眠時間が7時間の人に比べると、5~6時間の人と8時間以上の人は死亡率が15%も高いという結果が出ました。
また、6時間以下の睡眠を1週間続けると、免疫や炎症、ストレス反応などに関連する711個もの遺伝子に悪影響が出たというイギリスでの研究結果もあります。


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