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ウイルスを攻撃するリンパ球の最大の活動時間は副交感神経のはたらきが高まる睡眠中で、睡眠時間が減れば減るほどウイルスと戦うための時間も減ります。
それを端的に示すものとして、徹夜するとリンパ球の比率が10%下がり顆粒球の比率が10%上がったという研究結果もあるからこそ、睡眠時間の確保が重視されるのです。もちろん7時間眠りさえすればいいかというと、答えはNO。
良質な睡眠でなければ、体に備わった免疫機能を活かせません。
現代人は睡眠時間が減っているだけでなく、睡眠の質も大きく低下しています。
「ベッドに入ってもなかなか寝つけない」
「夜中に何度も目が覚めてしまう」
「寝足りないのに朝早く目覚めてしまう」
「たくさん寝ているのに疲れが取れない」
「眠りが浅い気がする」
などは睡眠の質が低下したシグナルです。
睡眠時間は確保できているのに、眠りを良質にできず体を弱らせ続けている人の多さには、日々の診療でも強い危機感を覚えています。特に中年を過ぎてからは、睡眠の質を上げられるかどうかが人生を楽しめる時間の長さを大きく左右する、と言っても過言ではありません。

そもそも「良質な睡眠」とは?

では睡眠の質とは、具体的には何を指しているのでしょうか。それを知っていただくには、まず睡眠中に体内で何が起きているかの把握が必要です。
個人差はあるものの、睡眠中はおよそ90分周期でノンレム睡眠とレム睡眠を繰り返しています。細胞の修復を促すホルモンは、眠りに落ちてから90~180分後のいちばん深いノンレム睡眠中に最も多く分泌されるという特徴があり、それが毛細血管を介して全身くまなく運ばれて体の修復が進むというのが大まかな流れです。だいたい午前3~4時が、骨や肌、筋肉が再生される細胞分裂のピークとされています。
傷つき疲弊した細胞にホルモンという修復指示が行き渡るのに3時間、酸素や栄養素という材料が届いて細胞呼吸を繰り返しながらジワジワと修復が進むのに4時間程度は必要と考えると3時間プラス4時間。これが推奨する7時間睡眠の内訳です。
では良質な睡眠を確保するには、どうすればいいのでしょうか。
実は朝まで熟睡できなかったり眠りが浅くなったりする方の多くは、本来睡眠中に優位になるはずの副交感神経のはたらきが上がっていません。


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