ボンドを魅了したハミルトン パルサー
ロジャー・ムーアがジェームズ・ボンドを初めて演じたシリーズ8作目『007/死ぬのは奴らだ』で登場するのは「ハミルトン パルサー」、通称“P1”。1970年にハミルトンから発表された、世界初のLED式デジタルウォッチである。
クッションケースに液晶パネルを備えた近未来顔が当時、大きな話題に。今年6月にはその誕生50周年を記念して、初期モデルをオマージュするゴールドモデル、そして1972年に登場した2代目の通称“P2”と同じSSモデルを復刻した。
安藤 神回のひとつはその『007/死ぬのは奴らだ』。その冒頭シーンでP2が登場するんですが、それがまた最高なんですよ。
ロジャー・ムーア演じるボンドが、朝方のベッドで隣に寝ていた女性から「もう1回♡」とせがまれるんですが、そのときに「P2」で時刻を確認するんですよ。裸でSSケース&ブレスレットの「P2」を着けているのがとても印象的。シビレますね。
広田 当時の最先端とも言えるクオーツ時計を着けていたんですね。
安藤 物語ではそのあと、MI6の長官で、ボンドの上司にあたるMが遣わせた女性が修理に出していたロレックスの「サブマリーナー」を届けにくる。そして、それに着け替える。
広田 ハミルトンの復刻は本当に話題で、ゴールドはあっという間に完売しましたね。
安藤 見た目のみならず、本当によくできていました。’70年代の時計の復刻というのはこれまでにもよくありましたが、それら特有の安っぽさのようなものがなく、一からしっかり作り込んでいることがよくわかる出来栄えでした。
広田 裸にパルサーで、ジェーム・ズボンドを気取る。ご興味ある人はぜひいかがでしょう(笑)。
安藤 そして、もうひとつの神回が1983年公開の『007/オクトパシー』。これも、ロジャー・ムーア主演作品です……。
もうひとつの神回で登場する時計は……?「ボンドウォッチ後編」もお楽しみに!
「時器放談」とは……
マスターピースとされる名作時計の数々。毎回、こだわりの1本を厳選し、そのスゴさを腕時計界の2人の論客、広田雅将と安藤夏樹が言いたい放題、言葉で分解する。
上に戻る 鳥居健次郎=写真 安部 毅=文