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■フィガロ(1991年〜)

さらに1991年にはパイクカーの第3弾として「フィガロ」が登場する。
この時は開発スタッフに多くの女性が加わったこともあり、先の2台とはまた違う、古いヨーロッパの街並みを優雅に走りそうなオープンカースタイルとなった。
「フィガロ」。2シーターの後ろに、狭いけれど2座備わる2+2の4人乗り。キャンバス地のルーフが電動で開閉する。
こちらも限定車となり、2万台があっという間に完売した。しかしバブルの崩壊にともない、パイクカーシリーズはこの「フィガロ」で幕を閉じてしまった。
実は今、これらパイクカーの人気が、特に海外で高まっている。例えばこの「フィガロ」はイギリスに約3000台があると言われ、オーナーズクラブも存在する。
いずれも全長4mにも満たない、小さくて愛くるしく、他人とは違うスタイルが約30年経った今も、国籍を問わず人々を惹きつけるようだ。
花のつぼみとも貝殻とも見える、レトロ調な「フィガロ」のスイッチ類。上記2台とメーター類のレイアウトが異なる。
もちろん日本でも人気は高く、30年も前の車にも関わらず、中古車で最も高いものは「Be-1」なら約160万円、「パオ」は約180万円、「フィガロ」に至っては約360万円もする(編集部調べ)。
いずれも中古車の流通台数はかなり少ないが、確かに今見ても我々の心をくすぐる。当時のヒエラルキーを打破するパイクカーは、タイムレスな価値を持つ車だと言えるだろう。
「中古以上・旧車未満な車図鑑」とは……
“今”を手軽に楽しむのが中古。“昔”を慈しむのが旧車だとしたら、これらの車はちょうどその間。好景気に沸き、グローバル化もまだ先の1980〜’90年代、自動車メーカーは今よりもそれぞれの信念に邁進していた。その頃に作られた車は、今でも立派に使えて、しかも慈しみを覚える名車が数多くあるのだ。上に戻る
籠島康弘=文


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