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SUVでも“人馬一体”にとことんこだわる

同時に2Lと2.5Lガソリンエンジンのほうも、日常域での扱いやすさと実用燃費を向上させるため、ピストンや排気ポートの形状などが見直された。
さらに2.5Lエンジンは高速道路の走行時などで、状況を見ながら4気筒のうち2気筒を休止させて、走行フィーリングを損なうことなく燃費の向上を図る機能も加えられた。
その結果はしかし、数値にはあまり表れていない。
2Lガソリンは最高出力155ps→156psへ、最大トルクは196Nm→199Nm。JC08モード燃費は改良前後とも16.0km/L(数値は20Sプロアクティブ)だ。2.5Lガソリンのほうも最大トルクが251Nmから252Nmと微増した程度。
数値的にはあまり変わらない=アピールしにくいにも関わらず、感覚的なところにまでこだわって手を加えるところがマツダらしい。
2019年12月の改良で加えられたインテリアのセットオプション。シルクベージュカラーのハーフレザーシートやLED室内照明などが備わる。
2018年10月には北米で販売している、同社の最大SUVのCX-9に搭載していた2.5Lガソリンターボエンジンを、国内車として初採用。デビュー時から搭載している車両制御機能「G-ベクタリングコントロール」も「G-ベクタリングコントロールプラス」へと進化させた。
通常ドライバーは、カーブはもちろん、直線道路でも路面の凹凸やうねりなどによって乱された走行ラインを直すためステアリングを(無意識に)修正している。
このG-ベクタリングコントロールは、この修正操作をエンジンの駆動トルクの増減によってスムーズに行えるようにするという、マツダ独自の技術だ。
2016年7月に開発されたG-ベクタリングコントロール。ステアリングの切り始めにエンジンのトルクを抑えて前輪に荷重をかける。操舵する前輪に荷重がかかるため、ステアリング操作の指示が路面に伝わりやすくなり、少しの操作でもスッと向きを変えることができる。
「プラス」へと進化したことで、コーナリング時の出口など、ステアリングを戻す際もスムーズになった。
おかげで、特にコーナリングの際には、まるで曲がることを予想していたかのようにスッと車の鼻先が入り、コーナリングが終わるあたりに「(ステアリングを)戻しすぎた!」など、変な切り直しも減る。そのため気持ちよく曲がれるだけでなく、修正操作が減るので運転も疲れにくくなる。
さらにこのとき、2.2Lディーゼル全グレードに6速MTを用意。このクラスのSUVにMT車が設定されるのは稀で、いかに同社が車と一体になって走る楽しみを表す「人馬一体」を重視しているかという証左といえるだろう。
2019年12月の改良では、4WD車に「オフロード・トラクション・アシスト」機能が備わった。これは4輪を微細に制御することで、想定外のスタック時にも、接地しているタイヤに最大の駆動力を伝えて脱出できるようにするというもの。
ナビ機能やオーディオを操作できる「マツダコネクト」を用意。通信機能を備え、ソフトウェアのアップデートはお店に行かなくても済む。2018年10月の改良でApple CarplayとAndroid Autoに対応、スマホのナビアプリなども使えるようになった。
このように「CX-5」は最新技術が開発される度に改良が施されているが、今のところ大きなデザイン変更がない。
恐らく今後2〜3年以内にフルモデルチェンジを控えているが、既に車の走る・曲がる・止まるに関する技術はほぼ出尽くした感があり、あとはオーディオや室内環境の進化に留まる可能性が高い。
まさに熟した美味しさを味わえる時期に、入ったと言えそうだ。
「味わい深い、熟成車」とは……
ひとつの車種でも、マイナーチェンジはもちろん、実は毎年のように小さな改良が施されている車は多い。ひとつのモデルの後期ともなるとその“熟成”はかなり進んで、ワインのよう深い味わいに。そんな通の間では人気の「後期モデル」は、我々にも当然、美味しい車なのだ。上に戻る
籠島康弘=文


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