最終試練:落下の試練
最後は現実的で、Gショックのルーツと言える落下衝撃の試験だ。
この実験室では、伊部さんが開発当初に3階から落としていた頃とは比べ物にならないような試験が行われていた。
非道な面持ちで佇むこのマシンは、「加速式落下試験機」と呼ばれるものだ。時計をセットする場所にバネが装備されており、最上段まであげたところでバネを反発させ、猛スピードで時計を地面に叩きつける。
しかも、落下の先にはコンクリートブロックを設置。安全性を追求するGショックに慈悲など存在しない。
そして、警報音とともに時計が目では追えないほどの猛スピードで落下。
これにはさすがに耐えられないかと思ったが……時計を拾ってみると、こちらも同じく一切の故障なく稼働していた。
これぞ、「G」の文字を冠するGショッククオリティ。驚異の耐久性が証明された瞬間だった。
実験を終えて
あまりの激しさに驚きの連続だったGショックの品質保証実験室。
今回は比較的に派手な試験を中心にご紹介いただいたが、このほかにも人工汗に時計を長時間浸す試験や、シャツ生地に幾度となく擦り付ける試験など、実生活を想定した試験も多数実施しているという。
「平均すると1モデルにつき、各コンセプトにあわせて100項目前後の試験を試作段階で行っており、すべての試験をクリアして初めて工場で量産することができます。なので、市販されているGショックは、こうした試験の数々を潜り抜けたエリートたちなんです」。
品質保証実験室の阿部さんは、壊れず作動し続けるGショックを片手に誇らしげに語る。
「こうした試験を考えたり、定量的に評価を行えるように試験機を開発するのも品質保証実験室の役割のひとつです。試験項目は、直近の4年で30項目ほど増えています。カシオは部品の小型化はもちろん、常に新しい技術を開発しているので、それに応じて試験も日々進歩しているんです」。
「創造貢献」「品質高揚」。これは、Gショックを展開するカシオが掲げる社訓である。社会をよりよくするための新技術の開発はもちろん、ユーザーに安心して、継続的に使用してもらうための努力も惜しまない。
品質保証実験室では今日も、開発途中のGショックたちが過酷な試験を乗り越えている。
市川明治=取材・文