試練其の二:静電気の試練
「静電気試験機」はその名のとおり、時計に静電気を放電させる試験だ。
「冬場は人体に1万ボルトを超える電流が溜まることがあります。しかし、時計は精密機械なので、静電気は天敵なんです」。
物腰の柔らかい丁寧な説明とは裏腹に、実際に試験機を手に取ると「バチバチッ!」と音を立てながら、Gショックに容赦なく放電していく。
「静電気試験機」で行う連続放電は、我々が日常で体験する「パチッ」という単発のような放電ではなく、連続でバチバチと負荷をかけるため、精密機械にとってはかなり辛い試験なのだという。時計によっては、このような放電で表示時刻がリセットされてしまうこともあるのだとか。
「この試験機がなかったときは、人が実際にセーターを脱ぎ着を繰り返してたんですよ」。
過去にはそんなアナログな実験が行われていたとは。心のなかで、当時の試験官をソッと労い、次の試練へ向かう。
4/5