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テーマ名「宇宙人と自由に交信できる時計」

「いつだって、私の原点は非常識です。そこで、未来の時間軸で非常識を想像してみたら、やはり宇宙になるのかなと思いました」。
SFのような世界観だが、伊部さんはまだ見ぬ未来を想像しながら、こう続けた。
「これまでの50年は、パソコンやスマートフォンなど、新しいものが生まれた時代でした。ですが、これからの50年はそういう時代ではなく、バーチャル世界で自己実現ができる時代になるのではないでしょうか」。
バーチャル世界における自己実現。これは一体、どういうことなのだろうか。
「実体のあるデバイスは、なくなっていくと思います。だから、PCやスマホを持たなくても、まるで映画のように、必要なときに空中ディスプレイや空中キーボードが目の前に浮かび上がってくるようなイメージです。その頃にはコミュニケーションの手法もさらに進化して、テレパシーではないですが、より科学的な根拠に基づいた、電話やメール機能の先を行く交信手段が誕生していると思います」。
SFチックな話を、やけにリアリティをもって語る伊部さん。
地球人が、まだ見ぬ宇宙人とコミュニケーションを取り、同じ時間をともにする。伊部さんの企画書にある絵が実現すれば、我々は火星で異世界の種族とスケートボードやツーリングをする日が来るかもしれない。
しかし、宇宙空間でより汎用性を高めるためには、地球上に存在するGショックでは耐えきれない部分もあるという。
「宇宙環境には、地球上に存在しない環境も存在するでしょう。例えば、温度(気温)の問題。物体が存在できないほどの高温帯、機能が停止するほどの低温帯。Gショックは壊れない時計を謳っているわけですから、コアをそれらの環境から守り、正常に作動し続ける仕組みを考えなければいけません」。
確かに、現実問題として、そういった課題も出てくるに違いない。
伊部さんのお話がただの与太話に聞こえないのは、「壊れない時計」という夢の時計を現実に作り出したから。
「宇宙船に乗っている宇宙飛行士の私服と、実際に宇宙空間を遊泳する宇宙服姿では、その仕様も大きく異なりますよね? それと同じで、時計のパーツの場合は、耐熱・耐冷というよりかは、熱い環境下では冷却されて、寒いところでは熱くなるといった仕組みが理想的かもしれませんね」。
 

無謀な挑戦でも公表するのが“伊部スタイル”

「宇宙人と交信できる時計」のほかにも、何かを思ったり想像することで情報が伝わる「念力ウォッチ」や、オールサファイアのガラス製Gショックにもトライしたいという伊部さん。
「サファイアのGショックは、ニューヨークで大々的に『作っています!』と公言してしまって。でも、ガラスだから、もちろん割れる(笑)。でも、あるときから、こういう無謀な挑戦でも公然と発表するようにしました。そうすることで、Gショックの時計は常にチャレンジから生まれたのだと思ってもらえるから。事実、若い研究者たちも日々熱心に、時計づくりに取り組んでいますので」。
伊部さんは、いつも非常識にヒントを見出し、飽くなき探究心で挑戦を続ける。諦めなければ、どんなことでも実現することができる。「創造貢献」というカシオの社是は、伊部さんがGショック開発の際に身をもって体験しているのだ。

そして、「不可能はない」という強い気持ちが、誰かに夢を見させ、社会をより良いものへと発展させる。
「SFの世界のようですよね(笑)。でも、今は仕組みが見当たらないだけ。2020年だって、50年前には想像もできないような世界だったはずです。勝手な妄想ですけど、私はいつだって夢を見たいと思っています」。
 
市川明治=取材・文


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