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ヒエラルキーなんて関係ない

さるクラシックカーイベントに帯同するためにモナコを訪れた際、フェラーリやベントレーなどの超高級車たちに交じって、現地ナンバーを付けたおびただしい数のアバルト 500、あるいは595や695が、街中をキビキビと快走していることに目を見張った。
今回の主役である「595」を含むすべての500系アバルトの魅力は、自動車業界に今なお残るヒエラルキーとは一線を画した「特別な世界」を構築していることにある。かつて数年間にわたってアバルト 500を愛用していた筆者は、そう確信している。
アバルト往年の名作を現代に昇華させたルックスのみならず、絶対的な速さよりも感覚的な速さを追求した走り。そして、劇画の擬音を思わせる「ブロロロッ」という排気音にいたるまで、すべてがスペシャル。フィアット500という可愛いコンパクトカーをベースとしつつも、アバルト固有の世界観を日常でも体感させてくれる。
だから、たとえ路上でフェラーリやランボルギーニなどと並んだとしても、引け目を感じることなどない。「スペシャルな車」という点においては、まったく同等という自己満足に浸ることができる。洋の東西を問わず、優れたコンパクトカーはあまた存在するが、そんなキャラを確立しているのはアバルトだけだ。
往年のレースシーンで大排気量車と対等に渡り合ったアバルトの伝説は、現代の日常においても味わうことができるのだ。
イタリア語翻訳者兼自動車ライター
武田公実
フェラーリの日本総代理店で勤務したのち渡伊。帰国後は旧ブガッティ社日本事務所を経て、ライターとして独立。各種自動車イベントに参画するほか、自動車博物館の企画・監修に携わる。
 

アバルトに乗って人生に転機が!

先日湘南に引っ越しました。都内に住んでいたときは、移動はタクシーを使えばそれでよかったのですが、湘南から都内まで通うとなると、やっぱり“通勤車”が必要になる。そのために、アバルト 595を買ったんです。
で、なかなか素敵な車だとは思ったのですが、もうちょっと刺激が欲しい。少しだけ速く走れるようにチューンしたいなと思って、いろいろと調べてたら、英国のとあるチューナーに行き着きました。で、そこに各種パーツを直接注文して、日本の業者に取り付けてもらったのですが、まぁとにかく素晴らしい一台に仕上がりました。その英国製パーツ、本当に最強です。
そしてふと思ったんです。「こんなにいいモノは、日本のみんなにも知ってもらいたい!」って。なのでこのたび、アバルト 595用パーツを輸入販売するビジネスもやることになりました(笑)。
ビジネスというよりは「ライフワーク」かな? ファッションビジネスとある意味同じで、海外の、自分が本当に「イイ!」と思ったものを買い付けて、それを日本で広めたいという。自分の、これまで培ってきたPRの経験や技術を活かしてみたいと思います。
だから今は、儲けは度外視でアバルトに熱が高まってます。デモカー置いて、好きな人たちの溜まり場にもなる実店舗も造る。これぐらい心が燃えるのは、やっぱりアバルトだからなんでしょうね。つまらない車だとやっぱり燃えませんよ、男は。
岩田事務所、wadi 代表
岩田 吾
不動産業界からファッション業界へ転身後、PRやブランディング、イベントディレクションなど多岐にわたり活動。ドライビング技術向上のためにと、カートレースを趣味にするほどの車好き。
 

谷津正行=文


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