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“激辛”がお好みの諸君へ

暑いっすね。この原稿を書いている時点でも暑いけれど、これをお読みになる頃のほうがもっと暑いはずだ。で、唐突ですが、今日の昼飯、何を食べます? 素麺と冷奴でさっぱりと済ますというのも一案だ。
一方で、激辛カレーや麻婆豆腐、熱くて辛い“ホットな食べ物”で立ち向かうという手もある。そりゃ毎日素麺じゃ力が出ません。フーフーしながらダラダラと大汗をかいて、食べ終わるとすっきり、元気が出る。自動車界でこんな役割を果たすのが、アバルト 595だ。
乗り心地はビシッと引き締まっていて、エチオピア(神保町の名店です)の50倍カレーのようにガツンとくる。足回りを締め上げているのには理由があって、ハンドルをちょこっと切っただけでもビビビッと反応するようなセッティングなのだ。
ビビッドに反応するのはエンジンも同じで、アクセルを踏む右足の親指に力を入れただけでグイッと前に出ようとして、乾いた快音が鼓膜を震わす。
ハンドルとアクセルの電光石火のレスポンスと対決しながら走らせていると、腹の底から元気が湧いてくる。さすがにエアコン完備だから汗をかくようなことはないけれど、運転を終えるとひと汗かいたような爽快感がある。スカッとするぜ!
もし、もっと辛いモノがお好みなら、オプションのエキゾーストシステム、レコードモンツァ(税込み18万1500円也)をどうぞ。音と加速感の刺激がマシマシ、50倍カレーが70倍カレーに変身する。
モータージャーナリスト
サトータケシ
出版社勤務を経て独立、フリーランスのライター/エディターとして活動。愛車シトロエン C6のエアコンのガスがダダ漏れ、窓を全開にしてアバルト 595とは別の意味でホットな夏を過ごしている。
 

100点満点ではないところがいい

ある時期からイタリア車が大好きになって、今は1957年型の古いアルファロメオに乗ってますし、アバルト 695 Cリヴァーレも所有しています。
アバルト 595は、日本人には造れない類いの車だと思いますね。欠点も多いんですよ。でもエンジンの楽しさやデザイン、色使いなどに関しては突出してます。ダメな部分もあるんだけど、突出している部分はものすごく突出して素晴らしいんです。
それって服においても同じだと思います。日本の服って、細かいところまで本当にビシッと几帳面に縫われてますが、イタリアの服は必ずしもそうではない。いい意味で、力の抜き加減がうまいんです。でもその代わり、こだわるところにはとことんこだわる。だから、一本筋の通った遊びの利いた服が生まれるんでしょうね。
すべてにおいて100点満点を目指すと、だいたいは「平均で80点」みたいになってしまう。でもアバルトはそもそも「すべて100点満点」なんか目指してないんですよ。だからその分、デザインの美しさやエンジンの気持ち良さに関しては、ほかとはちょっと次元が違います。そして小型車でそういった造り方をしてるのは今、世界でもアバルトだけでしょう。まさに、イタリアらしい車ですね。
万人受けはしないかもしれませんが、イタリアの服やカルチャーのことがわかる人なら、アバルトの良さもきっとわかるはずです。
トレメッツォ 代表
小林 裕
タリアトーレやバグッタなど、イタリアの人気ファッションブランドを取り扱うトレメッツォ代表。イタリアで毎年開催されるクラシックカーレースの祭典、ミッレミリアにも参戦経験あり。
 



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