ニューヨークで過ごした1日2ドルの貧乏生活
だけど、どうやったらアーティストになれるのか。その方法が分からない。そもそも、何をしたからなれるという世界でもない。
「まずはやれることからと思って……。キャンバスを買ったこともなかったので、とりあえず画材屋に行って、キャンバスを買ってきました(笑)」。
外資系金融会社に就職した大学時代の友人たちは、ニューヨーク研修に訪れると、ミッドタウンの高級マンションに滞在するなど、華々しい生活を送っていた。
同じ大学を出て、同じニューヨークにいながら、松山は1日2ドルの貧乏生活。けれども焦る気持ちはなかった。
「1ドルピザもあったし、お米だけ買っておいて、2ドルのさば缶を2日に分けて食べたりすれば、意外と2ドルでも暮らせる。それにスケーターから転身してアーティストになって、アートで食べていける存在がいることはなんとなく知っていて。歌手に例えるなら、オペラ歌手にはなれないかもしれないけど、ラッパーまでならいけるんじゃないか、そんな気持ちでしたね」。
だが、スノーボーダー時代に少し絵を描いていたとはいえ、創造性はなかった。自分では描けているつもりでいたが、それはいつも誰かの作風のアレンジに過ぎなかった。
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